Starlinkとポート付きドローンで目視外自律飛行、現場監理の時間を8割短縮 大林組とKDDIドローン

大林組とKDDIスマートドローンは、目視外で自律飛行し、建設現場やインフラの巡視、点検、計測、異常検知を自動で行うドローンシステムを開発した。実証では、現場監理業務の時間を80%削減し、官民研究開発投資拡大プログラムでA評価を獲得した。

» 2023年12月18日 16時00分 公開
[BUILT]

 大林組とKDDIスマートドローンは2023年12月7日、Starlinkと自動充電ポート付きドローンを用いた現場監理業務を省力化するシステムを開発し、ダム建設の現場で実証実験を実施した。実証そのものは、「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM:プリズム)」の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択されている。

345分かかる建設現場監理者の日常的な管理業務が60分で完了

設置した自動充電ポート付きドローン 設置した自動充電ポート付きドローン 出典:大林組プレスリリース

 2022年6月に日本政府は4000項目に及ぶ「アナログ規制」の見直しを発表した。この中には、インフラ点検で目視規制の廃止や建築申請、現場巡視の定点カメラ代替も含まれ、こうした規制緩和に対応するため、2社は現場監理や施設管理での複数の業務を自律的に行うドローンシステムを2022年11月に共同で開発した。

 今回の実証実験では、2023年2月に三重県伊賀市の川上ダムに自動充電ポート付きドローンを設置し、ドローンを自律飛行させることで、ダム建設の現場監理が効率化するかを検証した。また、地震発生時を想定し、ドローンによるダムや貯水池の状況把握も行った。

 通信環境は、KDDIが提供するStarlinkをau基地局と基幹通信網との中継回線「バックホール回線」としたauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」で整備した。自動充電ポート付きドローンのため、定期的な監視や測量のフライトが可能になり、撮影した写真は3次元点群モデルの生成と大林組が活用する「CPS(Cyber Physical System)」で管理した。CPSは、現実世界(フィジカル)で取得したセンサー情報をネットワークを介して収集し、コンピュータ上に構築した仮想空間(サイバー空間)で、処理、分析、解析、知識化する技術。CPS上では、AI画像判定による建設現場の進捗状況も把握できる。

CPS(Cyber Physical System)の画面 CPS(Cyber Physical System)の画面 出典:大林組プレスリリース

 実証の結果、建設現場や既存インフラの巡視、点検、計測、異常検知が自動化し、で行、建設現場監理者の日常的な管理業務を大幅に削減。具体的には、従来であれば、工事事務所からの移動時間も含めて345分かかる業務を、システムを使えば60分で済み、80%の削減につながった。結果を受けて、2023年6月に国土交通省が技術の導入効果や社会実装の実現性について高く評価し、最高評価のA評価を獲得した。

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