日建設計は、3D-LiDARによる人流計測やBIMモデル上でのIoTセンサー設置検討など、デジタル技術で人の動きと建築設計をつなぎ、スマートビル実現に向けた独自の試みを始めている。
日建設計は「第8回 JAPAN BUILD TOKYO−建築の先端技術展−」(会期:2023年12月13〜15日、東京ビッグサイト)で、スマートビルに関する最新の研究成果を公開した。
会場では、人流をリアルタイムで計測し、空間評価に活用できる3D-LiDARシステムを実演した。同システムはデンソーウェーブとの協働で開発したもの。自動運転に応用される3D-LiDARを使用して人の動きを計測し、定量的に評価する。
3D-LiDARはカメラと異なり、個人情報を取得せずにリアルタイムで計測可能という利点がある。一方で、莫大な計算資源を必要とするため、不特定多数の人の行動を把握するには操作や処理が重くなるという課題があった。そこで2社は、移動体が停止しても見失わずに、人の移動と滞在を少ない計算資源で把握するシステムを開発。取得したデータは空間の課題抽出や運用改善をはじめ、建物改修を行う場合の投資判断にも活用できる。
東京駅八重洲口のペデストリアンデッキのリニューアル工事では、事前に3D-LiDARシステムで効果を検証した。先行的に植栽やベンチを設置したところ、滞在人数が増加していることが確認された。これを基にデッキ全域への工事が決定したという。
BIMモデル上に、IoTセンサーで取得する温度や照度、位置情報のデータを可視化するクラウド型のダッシュボードツール「4D-DASH」も出展した。クラウドAPI「Autodesk Platform Services」を介したWebブラウザ上で、メーカーを限定しない複数のセンサーを統合して可視化し、その結果はURLを発行して関係者間で共有できる。IoTセンサー設置の検討段階で、施主や設計者に効果を分かりやすく伝えられる。
BIMデータやAPI接続情報、センサー情報の登録、IoTセンサー配置などの可視化までに必要な手順はWebブラウザ上だけで完結する。3Dモデルへのセンサーの配置指定は、座標だけではなく、ドラッグアンドドロップにも対応。Excel形式によるインポート/エクスポート機能を使って複数のセンサーを登録することも可能だ。
その他、ブースでは、オフィスワーカーのCO2排出量/削減量を可視化して環境行動を促すアプリケーション、建物の運用/維持管理段階のDXを支援する「IWMS(Integrated Workplace Management System)」なども紹介した。
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