日建設計とデンソーウェーブは、3D-LiDARを用いたリアルタイム人流計測システムを共同開発した。賑わい創出に向けた都市空間の評価や設備の省エネ制御、災害時の避難誘導などに活用する。
日建設計は2023年11月15日、3D-LiDARを用いて人流をリアルタイムで計測するシステムのプロトタイプをデンソーウェーブと共同開発したと発表した。
日建設計は、空間に対するニーズが時とともに変化していく中で、建物運用時の人の動きを定量的に評価し、空間の課題抽出や改善提案、施設運用に生かすことで、さらなる価値向上を実現できると考え、東京オフィスのパイロットフロアで運用を開始している。
自動運転や交通量調査に応用されている3D-LiDARを用いた人流計測技術は、カメラやビーコンに比べて位置検出の正確性が高く、個人情報を取得せずにリアルタイムで計測できるメリットがある。一方、大量の点群データで、人の形状を認識するには莫大な計算資源が必要で、広い空間内で不特定多数の行動を把握するには、操作や処理が重くなってしまっていた。
そこで両社は、現時刻と前時刻との点群の差分から、移動体を抽出する解析方法に、人が突然出現したり、消失たりしない前提に基づくポスト処理アルゴリズムを組み込んだ。そのため、移動体が止まった際でも見失わず、計算資源が少ない場合でも人の移動や滞在が把握できる。
主な用途としては、空間の利用状況に合わせた改修計画や災害時の避難誘導、イベント時の混雑検知、人流と連動した設備の省エネ制御、ロボット運行経路の補正などが想定される。
既に、東京駅八重洲口開発「グランルーフ」の一環で進められている約234メートルのペデストリアンデッキリニューアル工事で、システムの効果検証を実施した。取得したデータを分析したところ、滞在人数が平日で約12%、休日で約84%増加し、通行空間が滞在空間に転用されていると判明。長大なデッキ全域への工事実施という投資判断に寄与したという。
日建設計は今後、空間の課題抽出や改善提案に活用するとともに、2024年には東京オフィスで滞在人数に合わせた照明制御の検証を開始する。さらに将来は、3次元の都市モデル「PLATEAU」やBIMモデルとの統合も視野に入れる。都市や建物の静的データに、時系列の動的データを付加することで、4次元デジタルツインの構築が可能となる。
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