ダイキン工業、東京ガスエンジニアリングソリューションズおよび理化学研究所は、レーザーによるHFC-32の遠隔検知技術を開発した。2024年度のフィールドテスト実施、2025年度の実用化を目指す。
ダイキン工業、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(以下、TGES)、理化学研究所は2023年11月15日、レーザーによるHFC-32(以下、R32)の遠隔検知技術を開発したと発表した。また、ダイキン工業とTGESは、R32を遠隔検知する試作機も開発し、実証を行った。
R32は、主にエアコンの空気を冷やしたり、暖めたりするのに欠かせない冷媒と呼ばれるガスが封入されており、冷媒にはHFC(ハイドロフルオロカーボン)が使用されている。日本では世界に先駆け、2012年以前に主な冷媒として使用されていた「HFC-410A」と比べ、冷媒の温暖化係数を示す「GWP」が3分の1となる低GWP冷媒のR32への転換が進み、現在では、国内向けに製造販売されている家庭用エアコンのほぼ100%がR32となっている。
エアコンのフィールドサービスでの冷媒漏えい有無の確認には、漏えいが疑われる箇所に検査機器を近づけて周辺の気体を採取する採気式が従来採用されている。ただ、採気式では、エアコンの室内機付近にある点検口から天井の裏側に検査機器を持ち込み、脚立を動かすなどしながら複数ある室内機付近を確認して回るなどの手間がかかっていた。今回、開発した技術を用いることで、作業の効率化や安全性の向上が期待される。
新しい検知技術は、R32特有の近赤外線吸収波長帯に応じた波長の赤外線レーザーを射出し、壁面などで乱反射した光をレンズで集める仕組み。TGESが都市ガスの主成分であるメタンの検知を目的に開発したメタンガス遠隔検知器をR32向けに応用し、レーザー光の経路中にR32が存在した場合に起こる反射光の減衰を測定し、R32の有無を遠隔から0.1秒で検知する。また、約10メートルの距離からや窓越しの検知も可能となっている。
今回開発した技術と検知器は、R32を含んだ混合冷媒も検知する。以前は主要な冷媒として用いていたR410A冷媒などにも活用できるだけでなく、冷媒の再生プラントでの漏えい監視や撤去された機器からの漏えい検知にも適用できる。
検知範囲が1〜5万ppm-m(パーツパーミリオン)、検知精度が±10%(100〜1000ppm-m)、動作温度範囲が−17〜50℃。サイズが150×300×150ミリ、重さが500グラム。2024年度のフィールドテスト実施後に、2025年度の実用化を目指す。
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