西松建設は、山岳トンネル施工重機の遠隔操作技術・自動化技術を組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS」の要素技術として、ドリルジャンボの施工動作を無人化する「Tunnel RemOS-Jumbo」を開発した。Tunnel RemOSに関しては、2023年度までに各技術の実証試験を完了し、2027年度までの実用化を目指している。
西松建設は、ジオマシンエンジニアリングやカナモト、古河ロックドリルとともに、山岳トンネルの施工に用いるドリルジャンボによる一連の施工動作を無人化する「Tunnel RemOS-Jumbo(トンネルリモスジャンボ)」を開発したことを2022年7月27日に発表した。
建設業では、ベテラン技術者の退職や若手入職者の減少によって、労働力不足が深刻化している。一方、山岳トンネル工事では、切羽(きりは)での肌落ち災害が発生しており、作業員が切羽に立ち入る機会の削減と切羽作業の無人化が求められている。
上記の状況を踏まえて、西松建設ではトンネル施工用の重機を活用した無人化施工技術の開発に取り組んでおり、こういった活動の一環で、ドリルジャンボ遠隔操作システムのTunnel RemOS-Jumboを開発した。
Tunnel RemOS-Jumboは、遠隔操作室やドリルジャンボなどから成り、切羽から離れた位置に配置された遠隔操作室には、ドリルジャンボを走行させるためのレバーやペダル、削孔用の操作盤を備えたコックピットと映像を映すためのモニターが設置されており、切羽近傍の作業状況動画、音、振動を体感できるため、実機に搭乗している状態に近い感覚でドリルジャンボを遠隔で操れる。
切羽作業に合わせて遠隔操作室内の設定を切り替えることで、共通の設備を用いて他の重機も遠隔操作することが可能。
ドリルジャンボには、遠隔操作室からの操作信号に基づいて機体を制御するための機体制御盤や機体の周囲、切羽を映すための複数のフルHDカメラを搭載している他、遠隔操作室からの操作信号やドリルジャンボ側で取得された各種データは、坑内と機体に設置した無線通信設備によって伝送されるため、無線での遠隔操作だけでなく、地山を評価するための削孔データや将来の自律施工に向けた施工データの取得にも対応する。
具体的には、坑内電源と接続してから切羽までの往復移動、作業位置での停止、アウトリガの張り出しや収納といった走行・設置に関する全ての動作を遠隔で行える他、遠隔走行時の安全性を確保するために、後進時に機体後方のデプスカメラで人が検知された時や緊急停止スイッチが押された際には機体が自動停止する仕組みを採用している。
さらに、レバー操作で手動削孔を行う「遠隔マニュアル削孔機能」や事前の設定通りに自動で削孔を行う「遠隔フルオート削孔機能」を遠隔操作室内の操作盤で制御することによって、ドリルジャンボが搭載する3つのブームを1〜2人で遠隔操作する。
加えて、削孔の位置や角度、ブームの現在位置を遠隔操作室内のモニターでリアルタイムに確かめられるため、遠隔操作時でも高精度な削孔を実現し、削孔の進捗や削岩機の稼働データといった情報が自動的に収集・解析され、トンネル周辺地山における岩盤強度などの評価結果も即座に可視化し、客観的な地山評価や危険箇所の早期把握が行える。
既に、西松建設は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局発注の「北海道新幹線、磐石トンネル(北)他工事」でTunnel RemOS-Jumboの実証試験を実施している。その結果、施工に影響を及ぼす通信上の不具合は生じず、ドリルジャンボによる一連の施工動作を無線で遠隔操作可能であることを確認した。
今後は、削孔後における爆薬の装填(そうてん)やロックボルトの挿入、長尺削孔時のロッドの継ぎ足しなども遠隔操作で行えるようにシステムの改良を進めていく。
なお、Tunnel RemOS-Jumboは、古河ロックドリル社製の全自動ドリルジャンボ「J32RX-Hi ROBOROCK」をベースに開発され、同社独自の遠隔削孔技術「遠隔穿孔操作システム」と西松建設の「Tunnel RemOS」を融合させることでドリルジャンボによる一連の施工動作を遠隔操作可能とした。
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