大林組は、ロックボルト打設作業を遠隔操作で行えるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」を開発した。今後は、ロボルタスの実証実験を積み重ね、その他のトンネル工事施工技術と連携し、トンネル工事全体の生産性向上と省人化を実現することで、社会インフラの安全かつ迅速な整備に貢献する。
大林組は、ロックボルト打設作業を遠隔操作で行えるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」を開発したことを2022年12月26日に発表した。
山岳トンネル工事では、掘削後にトンネルを構造的に保持するために支保するが、その中で重要な役割を担う作業の1つがロックボルト打設作業だ。ロックボルト打設作業は、作業員が切羽付近での騒音や粉じんなどにさらされながら、重量物のロックボルトを取り扱う過酷な作業で、作業員の技量で施工スピードや品質が左右される。
解決策として、大林組は、山岳トンネル工事のロックボルト打設作業で必要な、削孔、モルタル注入、ロックボルト挿入の一連作業を遠隔操作で行えるロックボルト遠隔打設専用機のロボルタスを開発し、安全性向上と省人化を実現した。
ロボルタスは、切羽(きりは)に作業員が1人も立ち入ることなく、削孔、モルタル注入、ロックボルト挿入の一連作業を遠隔操作で行える。ロックボルトの長さやボルトの種類などの条件に合わせて設定も可能なため、緊急性の高い設計変更にも対応する。さらに、タブレットに作業状況が表示されるため、作業員の技量に左右されずに施工が行える。
具体的には、1本のブームでロックボルト打設作業に必要な削孔、モルタル注入、ロックボルト挿入が行えるだけでなく、20本のロックボルトを収納するため、トンネル掘削作業の工程を減らせる。ロボルタスを使用することで、ロックボルト打設作業に要する作業員を5人から3人へ削減し、40%の省人化を実現する。
ロボルタスに搭載されている削岩機は、地山性状に応じて制御するハンマードリル機構を備えており、比較的軟質な日本の地質に向いている。また、ノンコア削孔切羽前方探査システム※1の導入により、即時に切羽の安定性を評価する。
※1 ノンコア削孔切羽前方探査システム:岩石サンプルを採取せず、削孔時のエネルギーを解析して切羽の安定性を評価するシステム。
なお、大林組では、山岳トンネル施工の生産性を向上させる「OTISM(オーティズム、Obayashi Tunnel Integrated System)」の構築に取り組んでおり、ロボルタスは、OTISMでトンネル掘削の安全性向上と省人化を後押しする一連のシステム「OTISM/Tunneling(オーティズム/トンネリング)」の構成技術。
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