連載第5回は、現場の「安全衛生管理」で、作業員の危険行動を自動検知する「画像認識AI」について、複数の活用事例を交えながら解説します。
前回は、労働安全衛生におけるICT活用の前編として、熱中症対策を目的としたセンサーデバイスによるシステムを紹介しました。こうした建設ICTは、ウェアラブルなセンサーデバイスにより、現場の気温や作業員ごとの生体情報(温度や脈拍など)を取得し、「不安全な状態」の監視や予測を実現するものでした。
それでは、労働災害の要因として、もう1つのポイントとなる「不安全な行動」に対しては、どのような建設ICTが適用できるのでしょうか?
★連載バックナンバー:
本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。建設業の「働き方改革」につながる現場作業の生産性向上や安全衛生といった身近な業務改革を中心に、実例をベースにお伝えしたいと考えています。
近年、建設現場でウェアラブルカメラやネットワークカメラを利用する企業が増加しています。利用目的としては、資材管理や盗難防止、第1回でも話題として挙げた遠隔臨場(材料確認、段階確認、立会)、さらには安全監視などが挙げられ、導入も加速しています。その中で、今回は「安全衛生管理」を目的としたカメラ利用に焦点を当てて解説します。
現在の安全衛生管理におけるカメラ利用は、2つの効果が期待されています。
(1)遠隔監視における安全性向上
安全衛生の維持で、現場の監視は重要なポイントですが、管理者は全ての現場を見回ることが難しいのが現実です。カバーしきれない範囲について、カメラを用いた遠隔監視を利用する取り組みが始まっています。また、カメラを設置することで作業員の安全への意識付けに効果があるとされており、カメラ設置の普及が期待されています。
一方、管理者による職場巡視は労働安全衛生規則により実施が義務付けられており、1週間に1回以上、巡視を行う必要があります。普及には、ICT導入を前提とした規則緩和も必要です。
(2)事故発生時の映像活用による再発防止喚起
現場の映像を蓄積し、事故発生時の映像を活用して再発防止のための教育コンテンツに利用されています。実際の映像を用いることで、安全への意識付けに高い効果があるとされています。また、事故発生時の映像だけではなく、事故とはならなかったヒヤリハットの映像への活用ニーズも増加しており、蓄積された映像を解析しヒヤリハットの映像を抽出する技術も開発されています。
カメラ利用で管理者の負担を軽減…としたいところですが、カメラ映像を誰かが常にチェックしなければならないようであれば本末転倒です。最近ではAIが自動的に危険行動を検知するAIカメラやカメラ映像を活用したAIサービスが発表されています。次に、これらシステムの中核となる画像認識AI技術を中心に話を進めていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.