「画像認識AI」で現場の安全衛生を支える!頻発する“工事事故”を防ぐ建設ICT【連載第5回】建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(5)(2/3 ページ)

» 2023年10月13日 10時00分 公開

画像に映る人や文字、モノをAIで認識

 まずは、危険行動を自動検知するための画像認識AIの概要を説明します。画像認識AIとは、画像に映る人や文字、モノをAIで認識(特定/判別)する技術で、画像を用いてAIに学習させることで、新しい画像を識別できます。世界の画像認識市場は2023年から2030年までの間に、CAGR(年平均成長率)が17.4%※1といわれています。

※1 画像認識市場規模、シェア 成長レポート 2023〜2030年 FORTUNE BUSINESS INSIGHTS

画像認識AIの適用事例

 建設現場での危険行動を自動検知する画像認識AIのユースケースをいくつか紹介します。

 1.危険エリアへの作業員の侵入検知

 開口部などの立ち入り禁止エリアへ作業員が侵入したことをAIが検知する事例です。危険エリアへの侵入検知は、業種問わず最も多くのニーズがあります。カメラ映像からAIが検知する対象は作業員のみのため、技術観点では難易度が低いといえるでしょう。本ユースケースに関しては、多くのベンダーから学習済みAIを利用したシステムが提供されています。さらに、AIをカメラに組み込んだAIカメラなどもカメラベンダーから提供されています。危険エリアはユーザーによる設定が可能な製品が多く、カメラ位置や用途に合わせた設定が必要となります。

 2.重機との接近監視

 重機との接近監視は、多数の重機が日常的に行き交う建設現場で多くの需要があります。例えば、バックホーなどの重機へ作業員が不用意に接近したことをカメラ映像からAIが検知する事例があります。本事例は、重機にカメラを設置するパターンと固定カメラを現場に設置するパターンの2種類があります。重機にカメラを設置するパターンは、上記1の危険エリアへの侵入検知と基本的な考えは同じで、ユーザーが設定したエリア(重機の半径2メートル以内など)への侵入を検知するという仕組みです。

 固定カメラを利用する場合は、1とは異なり、作業員だけではなく重機もAIが検知しなくてなりません。そのため、想定される重機を事前にAI学習を行う必要があり、その検知した重機周辺を危険エリアとして設定します。

 3.安全装備品の装着判定

 安全装備の装着判定では、ヘルメットやフルハーネスなどの安全装備の装着有無をAIが判定します。本事例は、作業中に装備を外していないかという作業中判定と、作業前に装備をしているかを判定する2つのタイプがあります。本事例の場合、判定対象が小さい点や視認性が影響するため、1、2の事例と比較すると、技術的な観点での難易度は高めになります。

 日本国内の建設現場の場合、安全意識が高いため、装備未装着状態で現場へ入る作業員が少ないといわれており、ニーズはあまり多くないように感じます。海外の現場では装備未装着の作業員が多いようで、多くの製品が販売されています。

安全装備品の装着判定イメージ※3 安全装備品の装着判定イメージ※3 提供:日立ソリューションズ

 その他にも、作業員の転倒検知や墜落制止用器具フックの不使用者検知などさまざまな事例が増えています。

 最近では、2023年5月に奥村組が墜落制止用器具フックの不使用者検知に関するニュースリリースを発表しています※3。墜落制止用器具フックの不使用者検知は、大手ゼネコン5社を含む「建設RXコンソーシアム」で、「AIによる安全帯不使用検知システム分科会」が2023年に新設されるなど、注目を集めています※4

 AI活用により安全性が確保され、人による確認作業の負荷が軽減できれば、業務効率や生産性の向上につながることに、業界が大きく期待を寄せています。

※3 日立ソリューションズ「作業員安全確保支援ソリューション」

※4 「建設RXコンソ/大手5社幹事体制で連携加速」日刊建設工業新聞,2023年6月23日

墜落制止用器具フックの不使用者検知サービスイメージ 墜落制止用器具フックの不使用者検知サービスイメージ 提供:日立ソリューションズ

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