建設現場の“酷暑”を乗り切れ 熱中症対策など安全衛生を支援する建設ICT【連載第4回】建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(4)(1/3 ページ)

本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。連載第4回は、年々厳しさが増す酷暑の中で、熱中症対策をはじめとする建設現場の安全衛生を確保する各種IoTデバイスについて解説します。

» 2023年07月21日 10時00分 公開

 前回までは検査/点検業務を対象に、ICTの導入事例やその効果を解説しました。今回から、労働安全衛生におけるICT活用を2回に分けて紹介していきます。

 変革が進む建設業界ですが、「働き方改革」の要素として労働環境の安全衛生向上が課題の一つとなっています。各企業で、さまざまな安全活動に取り組んでいるにもかかわらず、労働災害の発生件数は横ばい傾向にあります。そもそも労働災害は「不安全な状態」に「不安全な行動」が重なったときに発生するため、「不安全な行動」をなくす、もしくはいち早く「不安全な状態」を見つけて是正できれば、労働災害を減少させられるでしょう。

 「不安全な状態」を見つける手段としては、IoTやAIなどのICTを活用した「センサーやカメラによる危険検知」が挙げられます。今回は、センサーを活用した事例を採り上げます。

2023年4月から「第14次労働災害防止計画」がスタート

 厚生労働省は「第14次労働災害防止計画」※1を2023年3月に策定しました。これは労働災害を減少させるために、国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画で、2023年4月〜2028年3月までの5年間を計画期間として、今まさに始まったばかりです。

 その一部を抜粋すると「安全衛生対策は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も踏まえ、労働者の理解・協力を得ながら、プライバシーなどの配慮やその有用性を評価しつつ、ウェアラブル端末、VR(ヴァーチャル・リアリティー)やAIの活用を図るなど、就業形態の変化はもとより、価値観の多様化に対応するものでなければならない」と示されています。ITの進化により、AI、IoTなどを活用した安全衛生対策がより現実的なものとなり、実際に導入企業が増えているからこそ、国としても労働安全衛生にDXを取り入れるべきと考えているということです。

※1 厚生労働省「第14次労働災害防止計画」

連載バックナンバー:

建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上』

本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。建設業の「働き方改革」につながる現場作業の生産性向上や安全衛生といった身近な業務改革を中心に、実例をベースにお伝えしたいと考えています。

暑さが厳しくなるなかで重要性が高まる熱中症対策

 建設現場は、安全衛生の観点でリスクの多い場所といえます。現場を行き交う重機、大きく重い建設資材、作業員は高所や地下での作業もあります。こうした作業環境下で、夏の暑さが年々厳しくなるなか、喫緊の課題となっているのが“熱中症対策”です。

 建設業関係者の熱中症による死傷者数は多く、厚生労働省の発表によると「熱中症業種別発生状況(2018〜2022年)」※2でトップの21%(916人)が建設業関係者とされています(2位は製造業の19%/836人)。

 熱中症で判断力が鈍った状況で仕事を続けることは、大きな事故につながる可能性も高く、熱中症対策に注目が集まっているのです。

※2 厚生労働省「職場でおこる熱中症」

厳しくなる暑さのなか熱中症のリスクも高くなっている 厳しくなる暑さのなか熱中症のリスクも高くなっている Photo by Adobe Stock

 厚生労働省が公表した令和5(2023)年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱※3には、作業場所で実測した暑さ指数(WBGT※4)を把握したうえで、身体作業強度を考慮した熱ストレス評価が必要と記載されています。熱中症は気付かないうちに発症してしまうことがあるため、熱ストレスを数値化して評価する必要があります。基準値を超えた場合には、休憩や水分補給することで、熱中症を未然に防げます。

※3 令和5年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱

※4 WBGT:Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)。熱中症を予防することを目的として、1954年にアメリカで提案された指標。人体の熱収支に与える湿度、日射・輻射などの熱環境、気温から推定される数値

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