国交省 中央建設業審議会・社会資本整備審議会は、建設業の昨今の環境変化へ対応していくため、建設業法の改正も視野に入れた早急に講ずべき施策を盛り込んだ「中間とりまとめ」を策定した。
国土交通省の中央建設業審議会(中建審)・社会資本整備審議会基本問題小委員会は、適切に建設工事が実施される環境づくりのために必要な対策を具体化するため、2023年5月よりこれまで5回の議論を行っており、2023年9月19日に過去5回を踏まえた今後の方向性を示す中間とりまとめを公表した。
建設業の課題として、新規入職の促進、将来の担い手の確保・育成を図っていくことが不可欠であると同時に、資材価格高騰や時間外労働規制に適切に対応しつつ、適正な請負代金や工期が確保された請負契約の下で、適切に建設工事が実施される環境づくりも欠かせない。これらを実現するには、公共工事のみならず民間工事も含めて、受発注者間や元請下請間で締結される建設工事の請負契約の在り方について、必要な見直しを検討すべきとした。
今回のとりまとめでは、建設業法などの改正も視野に早急に講じるべき施策についての方向性を示した。1.請負契約の透明化による適切なリスク分担、2.適切な労務費などの確保や賃金行き渡りの担保、3.魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性の向上の領域で中心に審議した。
請負契約の透明化では、発注者が請負代金の中に含まれる予備的経費を詳細に把握することは困難で、受発注者間で情報の非対称が生じ、下請業者なども含めた建設生産システム全体に経営悪化や不良工事の発生といった悪影響が及ぶおそれを防ぐために行う。
想定される施策としては、見積時に、建設工事のリスク情報を受注者から注文者へ提供の義務化をはじめ、建設費高騰を受けて、価格変動に伴う請負代金の変更条項を契約書上で明確化、当事者間でのコミュニケーションを制度的に担保、不当に低い請負代金での契約締結で国交大臣の勧告対象に公共発注者だけでなく民間事業者も含めるなどといった受発注双方でのリスク分散を図る。
労務費の適正化では、労務費の見積が曖昧なまま工事を受注した際に、適切な賃金の原資を確保できなくなるため、適切な労務費が下請契約などで明確化されるルールを導入して、不当な安値での受注を排除し、技能労働者の能力や経験に応じた適切な賃金の支払いや処遇の改善(賃金の行き渡り)を実現する。
魅力ある就労環境を実現では、2024年4月から適用される罰則付き時間外労働規制へ対応すべく、建設生産プロセス全体を通じた適切な工期の確保を徹底するとともに、情報通信技術の活用による生産性の向上つなげる。具体的には、受注者による著しく短い工期の禁止やウェルビーイングを実現する働き方改革に関する施策を検討。生産性向上は、ICT活用による現場管理のための指針を国が作成、特定建設業者が指針に即した現場管理に努めることを求めることに加え、監理技術者の専任制度を合理化させる。
参加委員はとりまとめを踏まえ、関係する法令の改正など速やかに取り組むとともに、制度の詳細や運用のルールに関する検討を引き続き行うことを強く要請する。
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