清水建設は、山岳トンネル工事で、切羽を見える化し、発破設計と穿孔作業工程を自動化する最適発破自動設計施工システムを開発した。
清水建設は2023年8月9日、古河ロックドリル、演算工房、ジャペックスと共同で、山岳トンネル工事の発破作業で生産性向上を目的に、地山の性状に合わせた最適な発破パターンの自動設計施工システムを開発したと発表した。
最適発破自動設計施工システムは、清水建設が開発を進めるICT、IoT、AIなどの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズスマートトンネル」の要素技術の1つとなる。システムでは、フルオートコンピュータジャンボで自動計測した穿孔時のエネルギー変化をもとに、地山の硬軟を可視化し、最適な発破パターンを導き出す。発破パターンから作成する穿孔プランを、プログラミング制御が可能なコンピュータジャンボに取り込むと自動施工が実現する。
山岳トンネル工事では、トンネル設計断面に対して必要量以上に掘削する余掘りや掘削が不十分なアタリが発生する。サイクルタイムやコストの増加だけでなく、品質や耐久性にも大きな影響を与えるため、最小限に抑える必要がある。従来は、発破精度に影響する穿孔本数や位置、火薬の装薬量といった発破パターンの設計は、熟練技能者が経験と感覚を頼りに行っていた。しかし、近年、熟練技能者不足が急速に進んでおり、データに基づく再現性のある設計手法の確立が求められている。
最適発破自動設計施工システムは、前サイクルの穿孔時にコンピュータジャンボが自動収集した穿孔エネルギー値をもとに切羽面の地山性状をサイバー空間で解析し、地山の硬軟分布に応じた最適な発破パターンを自動作成する。発破パターンは、切羽面を5分割したゾーン図で表示し、領域ごとに最適な穿孔数と装薬量が割り当てられる。掘削前にドリルジャンボブームの動線シミュレーションを行い、ブームが相互干渉しないよう穿孔順序を設定すれば、最適な発破設計によるフルオート穿孔の準備が整う。
現場への適用効果は、中日本高速道路発注の東海北陸自動車道真木トンネル工事での実証試験で確認済み。アタリ量の平均値で69.3%、余掘り量で41.4%とそれぞれ減少し、火薬使用量も7%減った。そのため、サイクルタイムや施工コストの大幅な削減とともに、トンネル掘削面の平滑化などトンネルの施工品質や耐久性の向上が見込める。
清水建設は今後、複数の国内トンネル工事への適用を予定しており、山岳トンネルの標準技術として広く展開していく。
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