鉄筋出来形自動検測システムは、2023年に3つの機能を拡充した形でバージョンアップする。
その1つ電子納品対応では、計測データの保管や検索を含む管理面を効率化。納品のルールに沿った画像出力の機能が搭載され、具体的には、撮影した現場画像の上に電子黒板を重ねて配置し、計測結果のオーバーラップ表示が可能になる。さらに、その階層構造の画像をそのままファイルとして出力できる。
2点目は精度の向上だ。鉄筋出来形自動検測システムでは、撮影した画像から鉄筋部分を抽出する。新しいバージョンでは、その抽出や鉄筋径の自動計測に関する精度がアップしている。
さらに、現在の鉄筋出来形自動検測システムはインテルのRealSense(リアルセンス)カメラでの使用を前提としているが、対応するカメラも拡大する。日立ソリューションズで建築向けソリューションに携わる技師の齋藤卓磨氏は、「(RealSenseと)同価格帯の広角カメラで、対応機種の選定を進めている」と話す。
バージョンアップのうち、特に電子納品への対応はユーザー待望の機能追加といえる。従来は、出来形を検測して作成した帳票と、マーカーやロット、黒板などを入れて撮影した画像をそれぞれ個別に管理していた。
また、写真の分類や整理などにも、時間を要して残業が発生する要因になっていた。電子納品に対応した鉄筋出来形自動検測システムであれば、データ管理が写真管理ソフトと連携して行えるようになり、ユーザーの手間を減らせる。写真管理に関しては、他社の写真共有アプリとリンクすることで、さらに使い勝手がよくなる。例えば、事前に複数の電子黒板を作り、撮影した現場画像とひも付けて一元的に管理するような使い方だ。
日立ソリューションズでは、ルクレの画像共有ソリューション「蔵衛門(くらえもん)」と2023年度中にも連携し、電子納品も含め、鉄筋出来形自動検測のフローをトータルで効率化することを検討している。
ちなみに、この鉄筋出来形自動検測システムは、トンネル工事でのコンクリート壁のロックボルトを対象にした間隔計測にも、応用利用されている。ロックボルトの間隔計測では、従来、転落事故のリスクがある高所作業車を使って、2人1組の作業が必要だった。検測システムを利用することで、作業車が要らなくなり、ワンオペの写真撮影だけで完結する。
齋藤氏は、「カメラの技術進歩もウォッチしながら、システムとしてどこまでサポートできるかを検討し、ロックボルトの計測以外にも適用範囲を広げていきたい」と語る。
鉄筋出来形自動検測システムは、西日本を中心にニーズが増えているという。日立ソリューションズでは、販売代理店などを通じ、エリアを広げながらサポートの充実を図っていく。
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