本連載では、建設業向けにICT製品を展開している日立ソリューションズの販売チームが、それぞれの専門分野を生かして執筆します。連載第2回は、検査/検測の業務を対象に省力化をもたらす、LiDARやドローン計測、画像解析技術などについて、事例も織り交ぜながら紹介していきます。
第1回のテーマとして、建設ICTとはなにか、ICTに導入に関して期待される効果などを紹介しました。
今回は、国土交通省の最近の動きを踏まえつつ、現場で使われるデバイスやセンサーの解説を交えて、検査/検測の業務を対象とした建設ICTをテーマに取り上げます。一般に公開されている事例にも触れながら、近年の傾向を解説します。
まずは、国土交通省の建設ICTに関する方針を改めて確認してみましょう。
「国土交通省では、全ての建設生産プロセスでICTなどを活用するi-Constructionを推進し、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指しています。公共土木工事において、さまざまな分野の知見を結集することで、デジタルデータをリアルタイムに取得し、これを活用したIoT、AIをはじめとする新技術を試行することによって、建設現場の生産性を向上するための研究開発を促進する『建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト』を進めて参ります」(※出典:国土交通省Webサイト)。
国土交通省では、平成30(2018)年度から毎年数十件のプロジェクトを採用し、新技術の研究開発が活発に行われています。特に、第1回でも触れた遠隔臨場や作業効率の向上に関する技術開発が進んでいます。
遠隔臨場については、現場に行かずに進捗確認したり、発注者への報告のために3Dモデルや360度画像を活用したり、または“デジタルツイン”※1であたかも現場にいるような状況を再現するための技術などが出てきています。
作業効率の向上では、さまざまな機材を使って検査を自動化することで、作業員減少への対応や重労働軽減を実現する技術が検証されています。それでは具体例を紹介しましょう。
※1 デジタルツイン:現実世界のさまざまな事象から得られるデータをもとに、コンピュータ(仮想空間)上でその事象をデジタル的に複製する技術
遠隔臨場向けの技術を用いて、現場をシステム上で再現することで、現場の様子を現場にいるかのように確認することができます。再現対象によって使われる技術は変わってきます。
屋外現場の場合は、ドローン測量を実施して現場の3Dモデルを作成する事例が多くあります。測量精度にもよりますが、3Dモデルの誤差は数センチに収まるため、現場の状況や形状の確認、進捗確認に利用可能です。
★連載バックナンバー:
『建設現場を“可視化”する「センサー技術」の進化と建設テックへの道のり』
本連載では、日立ソリューションズの建設ICTエバンジェリストが、建設業界でのセンサー技術の可能性について、各回で技術テーマを設定して、建設テック(ConTech)実現までの道のりを分かりやすく解説していく。
トンネルや建物内は、360度カメラの活用が普及しつつあります。写真や動画で目視確認し、進捗確認のために管理者が現場に行く回数を減らす目的で利用されています。360度カメラの低価格化もあり、若手技術者向けの教育コンテンツ作成など利用の拡大が期待されています。
また、“デジタルツイン”という3D技術などを用いてシステム(仮想環境)上に現場を再現する取り組みも発展しています。現場にセンサーを設置し、センサーから得られるデータを使って、システム上に現場の状況をリアルタイムに再現する試みです。
ここでは、国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」からいくつかの活用例を解説しましょう。
1.「LiDAR技術」の活用
トンネル工事の出来形管理は煩雑な作業が多いため、自動化が進められている分野の1つです。トンネル内を自走するロボットに「LiDAR」※2を搭載し、自動でトンネルの3次元点群データを取得する試行が進められています。点群データと設計データを比較することで、計画通りにトンネルが造られていることを確認できるため、従来と比べて工数を大きく削減することができます。
※2 LiDAR:Light Detection and Rangingの頭文字をとった言葉で、レーザー光を照射して、反射光が返ってくるまでの時間を計測し、距離や方向を測定光によるセンシング技術
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.