前田建設工業は、新潟県柏崎市の鵜川ダム建設工事で、施工状況をリアルタイムに把握すべく、MODE IoTプラットフォームを導入した。
米シリコンバレー発のスタートアップ企業MODEは2023年5月2日、MODE IoTプラットフォームを建設DXに活用している前田建設工業の活用事例を公開した。
建設業界では今、生産年齢人口減少による仕事の担い手や技術者不足が顕在化している。さらに2024年の「働き方改革関連法」適用を控え、業務効率化は重要課題の1つとなっている。
今回、MODE IoTプラットフォームを導入したのは、新潟県柏崎市で建設中の「鵜川ダム」。鵜川は過去に何度もはん濫を繰り返し、周辺地域は浸水被害を受けてきた。工事に際しては、豪雪地帯に位置し、冬季は工事が停止するために、業務効率化によるダムの早期完成は関係者の願いでもあった。
鵜川ダムの工事は2004年から施工に着手し、地下部分で水が流出するのをセメントミルクを加圧注入して防ぐ、グラウチングと呼ばれる基礎処理が建設期間の8割を占めている。グラウチング施工では、間隙水圧計を複数設置して、地盤内の水の動きを把握し、間隙水圧計の反応箇所を分析することで地盤内の性状を確認する。間隙水圧計の応答を確認するには、複数の間隙水圧計データとグラウチング施工データを比較検討しなければならず、これまではPDF形式の紙ベースで管理していた。
また、間隙水圧計データとグラウチング施工データのデータ集計は、ダム内に複数ある間隙水圧計のデータが内部メモリに保存されるため、内部メモリの回収が必要で、手間をかけられないために月一度しか回収できないといった問題点があった。さらに、紙ベースの帳票の突き合わせに時間がかかることやバラバラのデータを見ているために相関関係が分かりにくかった。こうした課題を踏まえ、今回、MODE IoTプラットフォームを導入するに至った。
MODE IoTプラットフォームでは、間隙水圧計データとグラウチング施工データをインターネットに接続し、リアルタイムにデータを収集。プラットフォーム上にデータを保管して、ダッシュボードで見える化し、複数のデータを1つの画面でリアルタイムに表示した。
2023年2月にMODEへ発注し、冬の間に打ち合わせとシステムを構築。春の施工開始とともにシステムの運用を開始した。
前田建設工業では、MODE IoTプラットフォームの採用で、当初の目的だったデータの比較検討作業が簡略化され、作業量が50%以下に削減された。また、リアルタイムで確認できるようになったため、月1度のデータ回収も不要となり、工事そのもののリードタイム短縮に加え、早期の対策が可能になった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.