清水建設は、東名高速道路の床版取替工事にデンマーク製自動マーキングロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」2台を導入し、橋面の墨出し作業で生産性を約90%向上させることに成功した。
清水建設は2023年4月19日、グループ会社の日本道路の協力を得て、東名高速道路所領橋他2橋床版取替工事にデンマーク製の自動マーキングロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」2台を導入した結果、橋面のマーキングとなる墨出し作業で、生産性を約90%向上させたと発表した。
清水建設の土木工事現場では、「Shimz Smart Site Civil」とのデジタル化コンセプトに基づき、自動化施工を推進している。構造体の品質を左右する施工技術は、自社開発を原則としているが、仮設工事については開発主体を問わず、さまざまな生産性向上に貢献する装置やロボットを導入している。
高速道路の床版取替工事は、通行車両の交通規制を伴うため、工期短縮が欠かせない。そのクリティカルパスの1つが、残置構造物を切断機械で損傷しないように、老朽化した床版の切り出し線を橋面に引くマーキング作業だ。マーキング作業は現状では、膨大な作業が人手で行っており、中腰で行う苦渋作業のため、作業の効率化と負担軽減が課題となっていた。
そこで清水建設は、自動マーキングロボットのタイニーサーベイヤーに着目。日本道路と共同で実施したロボットの性能試験を経て、所定の測量やマーキング精度を確認できたため、神奈川県足柄上郡山北町谷ケから静岡県御殿場市東田中までの所領橋他2橋の床版取替工への適用を決めた。なお、発注者は中日本高速道路で、清水建設は詳細設計と施工を担当しており、工期は2021年4月15日〜2024年7月。
タイニーサーベイヤーは、600(幅)×700(高さ)×800(奥行き)ミリの小型サイズロボットで、重さは18キロ(バッテリー別)。制御ソフトを内蔵するタブレットと自動追尾型トータルステーション(TS)がセットになっている。動力源はバッテリーで、400ミリリットルの線引き用スプレー缶をセットすると、延200メートルのライン引きが可能だ。
使用手順は、はじめに床版切り出し線のマーキング作業に必要な測量精度や自律走行のルールを独自に設定し、マーキングポイントの2次元座標とともに制御ソフトに入力する。作業に際しては、TSが取得するロボットの現在位置を表す2次元座標をもとに、制御ソフトがロボットを所定の場所に誘導しマーキングを指示する。
導入した工事では、約2250平方メートルの橋面に点在する1077点の測量ポイントが、ロボットによるマーキングの対象となった。2台のロボットを投入し、1日あたり測量工13人を想定していた作業が1日1.5人で済み、コストを増やすことなく生産性が約90%向上したという。
清水建設と日本道路は今後、床版取替工事や空港などの大規模舗装工事にタイニーサーベイヤーを採用し、互いに培ってきた道路や橋梁(きょうりょう)の施工関連技術の融合や新技術の共同開発、プロジェクトの共同受注などに取り組み、シナジー効果の創出に努めていく。
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