とはいえ、待ったなしで現場は動く。現状のプロセスがそうなっていなくても、BIMでやらなければならない場面は出てくる。確かに工期を考慮すれば、BIMの運用方法を試行錯誤している余裕はないだろう。また、チャレンジしてはみたものの、うまくいかず、結局は従来の2Dに戻さなければならないというリスクはつきまとう。
以下のような意見(表3)は、現場の死活問題である工期との兼ね合いで、作業効率の向上を過度にBIMに期待してしまい、それが思ったほどではなかった(初期の反発)という感想からくるものであろう。
<表3:作業効率に関する課題>
作業効率に関わるこうした課題については、既に対策を講じている現場やプロジェクトが存在する。さらには、作業効率の向上自体だけでなく、その先の品質管理のためのコストとして、BIMの作業効率の向上にコストをかける必要性があると考えるゼネコンも出てきている。
例えば、現場の従事者が正確な数量を把握することは、業者の提示する数量との比較を可能にし、適切な発注タイミングや適切な工程の把握につながり、ひいては品質管理にもつながっていく。もっとも、品質管理のための業務は多岐にわたり、大変時間のかかるものだ。そこで、BIMにより迅速で正確な数量把握が可能になれば、現場従事者の品質管理業務にかかる時間やコストが低下し、精神的にも物理的にもよりこまやかな品質管理が可能になる。これは、確実に現場従事者の武器になるはずだ。
筆者らは、最終的には施工BIMが機能するような建設プロセス/BIMワークフローを提案したいと思っている。そのために、今後の寄稿では、建設プロセス/BIMワークフローがいまだ定まっていない状況下で、施工の現場で行われているBIMを生かすための努力奮闘の各社の取り組みや成功事例を紹介しながら分析もしていく。こうしたユースケースは、建設DXに向けた過渡期の施工現場でのBIMの在り方、現状の建設プロセスでの施工BIMの捉え方のヒントになるとともに、ひいては目指すべき建設プロセス/BIMワークフローを考察するためのサジェスチョンにもなればと期待を寄せている。
山崎 芳治/Yoshiharu Yamasaki
野原ホールディングス グループCDO(Chief Digitalization Officer/最高デジタル責任者)。20年超に及ぶ製造業その他の業界でのデジタル技術活用と事業転換の知見を生かし、現職では社内業務プロセスの抜本的改革、建設プロセス全体の生産性向上を目指すBIMサービス「BuildApp(ビルドアップ:BIM設計―製造―施工支援プラットフォーム)」を中心とした建設DX推進事業を統括する。
コーポレートミッション「建設業界のアップデート」の実現に向け、業界関係者をつなぐハブ機能を担いサプライチェーン変革に挑む。
守屋 正規/Masanori Moriya
「建設デジタル、マジで、やる。」を掲げるM&F tecnica代表取締役。建築総合アウトソーシング事業(設計図、施工図、仮設図、人材派遣、各種申請など)を展開し、RevitによるBIMプレジェクトは280件を超える。
中堅ゼネコンで主に都内で現場監督を務めた経験から、施工図製作に精通し(22年超、現在も継続中)、BIM関連講師として数々の施工BIMセミナーにも登壇(大塚商会×Autodesk主催など)。また、北海道大学大学院ではBIM教育にも携わる。
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