施工BIMの未来のために―BIM活用の実態調査からみえてきた諸課題と在るべき姿【現場BIM第2回】建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(2)(1/3 ページ)

“施工BIM”は、建設DXの「建設のプロセス/BIMワークフロー」と密接に関係する。BIMの過渡期にある今、現場のリアルな課題に目を向け読者と共有することで、施工BIMの未来に向けた第一歩としたい。

» 2023年01月23日 10時00分 公開

 前回、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションを成し遂げるには、「建設プロセス全体を一斉に変えていかなければならず、そのためには全関係者が足並みをそろえて、最初の一歩を踏み出すことが肝要だ」とお伝えした。

 建設プロセスは企画・設計・施工・維持管理というフェーズに分けられるが、全てのフェーズでBIMがデジタル基盤となるように、組織、登場人物、仕事の仕方、権限や責任の所在といった変革が求められる。

 本稿のテーマである施工フェーズにおけるBIM(以下、施工BIM)はどう在るべきかを考えるとしても、BIMは建設プロセス全体のデジタル基盤なのだから、プロセス変革の議論が先行しなければならないが、施工BIMがどのように機能するのか、または施工BIMに持たせたい機能や効果はどのようなものかなどを検討しておくことは、プロセス全体の変革を議論する際にも生きてくるはずである。

BIMの配筋モデル

 筆者は昨今のBIM導入機運の高まりから、BIMソリューション(導入コンサルティング、研修、マネジメント、モデリング、人材派遣など)を提案する機会が多くなってきたこともあり、各ゼネコンのBIMに対する取り組み状況や現場の声を直接見聞きしてきている。連載第2回の今回は、数多くの現場を見てきた経験を生かし、建設プロセス/BIMワークフローにおける施工BIMの在り方を考えるため、すなわち施工BIMの未来のために、施工現場のリアルな課題とそれに対する取り組みに目を向けたいと思う。

現在の“施工BIM”は、いまだ道半ば…

 現在の施工BIMは、いまだ道半ばといったところである。日本建設業連合会が2022年11月に発表した「BIM活用の実情把握に関するアンケート」結果にも、如実に現れている。

 大手ゼネコンでも、BIMに関しては喧喧囂囂(けんけんごうごう)とした議論の真只中にある。そのため、現場で施工BIMが機能しないのも仕方が無い。なぜなら現在の「建設のプロセス/BIMワークフロー」は、まだ施工BIMが生きるようには組み立てられていないからだ。そもそもBIMは、単なる2次元(2D)に置き換わる新しい設計図書や施工図の在り方という「ツール」レベルだけの問題ではない。施工BIMは、建設DXにおける「建設のプロセス/BIMワークフロー」自体の変革とセットで語るべきものであり、端的にいえば、「建設のプロセス/BIMワークフロー」が施工BIMの在るべき姿にマッチしたものに変革されたとき、ようやく施工の現場でBIMは機能しはじめる。

「建設のプロセス/BIMワークフロー」のイメージ

 施工BIMの議論も、結局は風上の建設DXにおける「建設のプロセス/BIMワークフロー」はどう在るべきかという本質論に行き着く。従って、まずはこの議題に向き合い、具体的なBIMワークフローが決まらなければその先はない。しかし、プロセス変革の途上であっても、否応なしに現場は動く。プロセスそのものは以前と変わっていないのに、建設DXの旗印のもと、BIMによる施工が強制的に要求されてしまう。それでは、現場からの反発が起きてしまうのは当然のことだろう。

<表1:筆者が見聞したBIM導入に対する現場の声>

  • そもそも2次元の図面だけで建物はちゃんと建つ(2Dの図面でも3Dイメージはできる)
  • 便利なツールもあるようだが、それが無くてもこれまでやってきた
  • 便利なツールでは若手が育たない
  • BIMでは時間、工数がかかる
  • BIM導入コストが高い
  • BIM運用コストが高い
  • BIMが実行予算に入っていない
  • BIMでは現場で図面を修正するのが困難(時間がかかる)
  • BIMを扱える人材がいない
  • 工期上、試行錯誤している時間的余裕がない
  • うまくいかなかった場合のリスクが高い
  • フロントローディングが重要だとしても、それができる組織環境になっていない
  • 建築の少しずつ修正しながら作りあげていくという従来型プロセス下ではBIMでは時間がかかりすぎる

 これまで、私の耳に入ってきたBIM導入に対する現場の意見や課題は表1のようなものであった。整理すれば、「建設のプロセス/ワークフローに関する課題」(表2)と「作業効率に関する課題」(表3)に分けられる。

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