【第4回】物件画像に映りこんだ人や車のナンバーを自動消去 画像認識AIがもたらす不動産業界の変革ITで変わる、不動産業界の現在と未来(4)(2/2 ページ)

» 2022年12月22日 10時00分 公開
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不動産業界における「画像認識AI」の活用事例

 不動産業界でも、不動産関連情報と物件画像を教師データとし、画像認識を活用して不動産会社の業務課題の解決、または業務支援につながるAI技術が存在します。

 まずは、物体検出です。

 物件画像には、物件情報と一緒に登録される外観や室内、周辺施設などの画像が掲載されています。その画像に写り込んでしまった人物や車のナンバープレートなどは、プライバシーを保護する目的で個人が特定できないように、モザイク加工などを施す必要があります。従来、多くの不動産会社では目検で確認し、画像を加工していましたが、コストの負担や見逃しのリスクが課題となっていました。

 AIの物体検出では、物件画像に写り込んだプライバシーや著作権侵害にあたる対象物を検出するAIモデルを開発し、AIによって不適切な箇所を識別して、自動でモザイク加工を施す処理を可能としています。

 2021年5月の実績では、1カ月で約1079万件の物件画像が登録される中で、約18万件の加工処理ができています。人手に換算すると、約6000時間の作業時間が短縮されました。また、AI導入により、全物件画像のチェックが可能になったことで、不適切画像の見落としリスク防止にもつながっています。

AIによる物体検出のイメージ 提供:アットホームラボ

 次に、画像分類です。

 不動産会社は物件情報をシステムで管理する際、手動で物件画像の種類を入力しなければなりません。しかし、入力する不動産情報は項目数が大変多く、入力作業に多くの時間が費やされていました。

 そこで、物件の外観やリビング、キッチン、トイレ・バスなど、画像内の主要な対象物は何なのか、画像内容を自動識別するAIモデルを開発し、物件情報の登録・管理システムに当モデルを実装しました。

AIによる画像分類のイメージ 提供:アットホームラボ

AI導入において大事なのは、これからの「変化」を恐れないこと

 画像認識技術の導入ハードルが下がり、今後もさまざまな業界で加速し、私たちの生活とAIの距離は近づいています。これまで、人の手によって行われてきた業務を完全にAIに置き換えられるわけではありませんが、デジタル技術など新しい技術を活用することで、社会課題の解決、さらには持続可能性の向上などに大きく寄与していくでしょう。

著者Profile

大武 義隆/Yoshitaka Ootake

アットホームラボ 執行役員 アドバンストテクノロジー部 部長。アットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。2019年5月にアットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボの設立に伴い、現職。テクノロジー部門を統括し、不動産分野の課題解決に適したさまざまなAIモデルの企画を担当。

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