本連載では、不動産に関する各種データや不動産仲介の現場から集めたリアルな声をもとに、アットホームラボの磐前淳子氏が最新の市場動向について解説していきます。
2020年は、年明けから新型コロナウイルスの感染が拡大し、4月7日に緊急事態宣言の発令、5月25日に解除されたものの、新しい生活様式への対応など、私たちを取り巻く環境が大きく変容した1年でした。これらを受け、賃貸住宅市場はどのように変わってきたのかを見ていきましょう。
コロナ禍に見舞われた2020年4〜6月期、地場の不動産仲介業における景況感は、首都圏・近畿圏とも急激に落ち込み、仲介業の業況DI※は調査開始以来の最低値を記録しました(図表1)。その当時、不動産会社からは「引越しを考えていたお客様の多くが、コロナ自粛を受け元の賃貸物件にとどまった」「転勤で東京に来る法人客が減少した」「学生の入居キャンセルが相次いだ」など、外出自粛要請に伴う転居の見合わせで、仲介取引の減少や取りやめを嘆く声が多く聞かれました。
※アットホーム加盟店を対象に、四半期ごとに実施している居住用不動産市場についてのアンケート「地場の不動産仲介業における景況感調査」より。都道府県知事免許を持ち、5年を超えて不動産仲介業に携わる店舗の経営層にインターネットで調査し回答を指数(DI)化。DI50=前年同期並みの業況とします。
その後、緊急事態宣言が解除され、経済活動が再開した後の7〜9月期には来店客も増え始め、業況は大きく改善しました。しかし、それでも業況DIはコロナ前の水準にまで回復できておらず、低位にとどまっています。
10〜12月期の景況感はそこからどう変わったのか?詳しくは次回、ご紹介いたします。
次に、家賃の動きを見てみましょう。市場規模が最も大きい東京23区における賃貸マンションの20年11月の平均募集家賃は、シングル向き(30平方メートル以下)が前月比マイナス0.7%の8万8645円、ファミリー向き(50〜70平方メートル)は同プラス0.3%の19万558円でした。家賃を前年同月と比較すると、シングル向きがマイナス0.9%なのに対し、ファミリー向きはプラス3.5%と、部屋の広さによって傾向に違いが出ています。
2015年1月の家賃を100とした指数グラフで見ても、シングル向きの家賃は4月以降下落傾向であるのに対し、ファミリー向きは高水準を維持していて、両タイプは対照的な推移となっています(図表2)。
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