【第2回】“AI名寄せ”で業務負荷の軽減と分析精度の向上〜不動産ビッグデータ活用の第一歩〜ITで変わる、不動産業界の現在と未来(2)(1/2 ページ)

昨今、不動産業界や建設業界をはじめ、さまざまな業界が注目している「ビッグデータ」。これまで蓄積したデータを活用することで、消費者や顧客ニーズの分析精度向上が期待されていますが、膨大な情報の整備が課題となり、ビッグデータの活用が進んでいない企業が多数存在するかと思います。アットホームホールディングスのグループ会社アットホームラボは、2021年8月に特許を取得した「集合住宅名寄せプログラム」と呼ばれるAIを活用した“名寄せ”の技術を独自開発しました。そこで連載第2回では、不動産業界が抱える課題に着目し、AI技術の開発背景や特徴、活用事例などについて解説します。

» 2022年08月03日 10時00分 公開

“表記ゆれ”の物件情報を統一、業務負荷の軽減へ

 グループ会社であるアットホームがこれまで保有してきた大量の物件情報データは、さまざまなサービスに活用されています。例えば、建物情報に紐(ひも)づき、過去の販売/募集の情報履歴を一覧化して確認できる「不動産データプロ」というサービスです。不動産データプロは、不動産管理会社が賃料を設定する際、過去に募集された同一建物、周辺建物の賃料履歴や周辺売却物件の価格履歴を参考にする場合に活用いただいています。

 同一の物件を複数の不動産会社が、不動産情報サイトのアットホームや不動産情報流通プラットフォーム上に登録して公開することがありますが、建物名や住所などの表記方法が統一されていないため、同一物件にもかかわらず、わずかな“表記ゆれ”で異なる物件として取り扱われるケースがあります。サービスの名寄せ精度が悪いと、同一物件が複数表示されてしまい、利用者は情報収集に時間がかかってしまったり、誤解を与えたりしてしまうことにもなりかねません。

物件情報データのルールベースとAIの名寄せ比較 提供:アットホーム

 そのため、同じ物件情報の表示対策として、判定基準となる各項目の登録内容が一致しているか否かで判断するルールベースで、建物(棟)情報の名寄せ処理を行っていました。しかし、機械的処理だけでは十分ではなく、人のチェックを加えることで、提供する情報の正確性を担保していましたが、人員への業務負荷が高いことが課題でした。

「不動産データプロ」の画面イメージ 提供:アットホーム

 アットホームラボはそのような課題を解決し、サービスの質向上や不動産会社の業務支援に役立てるために、物件情報の登録内容を総合的に解析し、同一棟を判定するAIを活用した「集合住宅名寄せプログラム」の開発に至りました。

アットホーム連載バックナンバー:

ITで変わる、不動産業界の現在と未来

本連載では、アットホームの不動産市場や不動産テックなどの各専門分野に長けた執筆陣が、法令改正に伴う消費者動向や不動産分野でのAI先端活用例について、各回テーマを設定し、現状と今後の予測について独自分析していきます。

わずか4つの情報だけで名寄せが可能、AI活用で分析精度が向上

 「集合住宅名寄せプログラム」の主な特徴は、「4つの情報」と「AIの活用」の2点にあります。

 アットホームが取り扱う物件情報には、設備や共有部分、広さなどといった膨大な情報があるなかで、集合住宅名寄せプログラムであれば、住所・竣工年月・建物名・地上階の4つの情報のみで同物件の判断(名寄せ)ができます。個人情報など重要な情報に触れずに、同一の棟かを判定できるので、何らかのトラブルが生じても外部への情報漏洩(ろうえい)のリスク防止にもつながります。

 また、「AIの活用」では、AIを使った精度の高い名寄せロジックを開発しました。AI名寄せは、建物名の表記ゆれ(例えば、漢字/片仮名/ローマ字の違い、東棟/EAST棟、A棟/A号などの表現の違い)などを含む、約800万件のデータを学習したAIによって、全体の登録内容を総合的に判断して結果を出しています。

 一例として、不動産情報サイトのアットホームで公開している、ある地域で不動産会社が登録した表記ゆれが発生している物件を10万件(部屋単位)とした場合に、ルールベース(住所、竣工年月、建物名、地上階が同一のもの)で、棟単位に名寄せすると1万4200棟に集約できますが、AIの名寄せ技術を活用すると、さらに8930棟までまとめることができました。ルールベースの名寄せと比較すると、5270棟(約37%)分の効果が実証されたことになります。AIを活用することで、分析精度だけでなく、サービスの質や作業効率の向上が期待されています。

10万件の物件情報が「AI名寄せ」で8930棟にまで集約 提供:アットホーム
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