エイターリンクは、マイクロ波を使うことで、長距離のワイヤレス給電を可能にする「AirPlug」を開発した、AirPlugは17メートルを超える場所に安定した電力を供給できる技術で、バイオメディカル、製造、ビルマネジメントなどの複数の領域で導入が期待されている。既に竹中工務店では、AirPlugとIoTセンサーを組み合わせた室内空調ソリューションを構築し、実証を経て2022年9月から静岡営業所で本格運用している。
エイターリンクは、スタンフォード大学発のスタートアップ企業。CTOの田邉勇二氏は、スタンフォード大学のリサーチサイエンティストとして、バイオメディカルインプラントデバイス(体内に埋め込むタイプの医療機器)の研究開発を行ってきた。米粒サイズの心臓ペースメーカーを世界で初めて実現したのは、その成果の1つだ。
ペースメーカーの開発を通じて獲得した“マイクロ波を使ったワイヤレス給電”の技術は、空間伝送型ワイヤレス給電システム「AirPlug(エアプラグ)」という名で製品化され、エイターリンクが商標を獲得している。
エイターリンクのAirPlugは、17メートル以上離れた場所への給電、双方向通信、あらゆる角度に対応できるなどの特長を持ち、医療以外の分野でも利活用が見込まれている。
ワイヤレス給電はその名の通り、電気を送る際に“配線”を使わない給電方式だ。配線や端子などでの接触を行わずに給電する技術は、既にスマートフォンや電動歯ブラシなどで利用されている。しかし、AirPlugはその性能が全く異なる。
AirPlugでは、給電にマイクロ波を用いており、そのため、遠くの場所にある機器に対しても給電が可能になる。通常、スマートフォンやタブレットなどの給電では、送信機とデバイスが近距離でないと機能しない。対して、AirPlugは最大17メートル離れた場所にも給電できるので、例えばオフィスの空間全体を給電可能なエリアにして、空間内であればどこにあっても給電を行うことが実現する。
AirPlugの給電が実用化した背景には、ワイヤレス給電に関する国の規制が緩和されたことが大きい。エイターリンク 代表取締役CEO 岩佐凌氏は、規制緩和に関してエイターリンクがリーダーとなり、総務省と交渉を行ってきたと話す。その結果、2022年5月26日に長距離ワイヤレス給電に関する省令「電波法施行規則等の一部を改正する省令(総務三八)」が改正され、AirPlugの正式運用が可能となった。
その後、2022年9月26日に、無線電力伝送用構内無線局(WPT局)の第1号を取得し、これまで実証実験を行っていた竹中工務店の静岡営業所で、AirPlugの920MHz帯でのWPT局の本格運用を開始している。
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