清水建設は、岡山県岡山市北区の「岡山大学津島キャンパス」で、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)パネル工法により建設を進めている「岡山大学共育共創コモンズ」の建方工事が最終段階に入り、近日中に上棟を迎える。施工現場では現在、CLTパネル工法では国内最大級となるスパン18メートルの大空間を構成するCLT大梁部材の架設を行っている。
清水建設は、岡山県岡山市北区の「岡山大学津島キャンパス」で、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)パネル工法により建設を進めている「岡山大学共育共創コモンズ」の建方工事が最終段階に入り、近日中に上棟を迎えることを2022年9月28日に発表した。
岡山大学共育共創コモンズは、岡山大学の旧工学部と環境理工学部を再編統合して2021年4月に設立された新工学部の新しい学びの場で、地域や企業との協働促進をする拠点として計画された木造2階建ての建物となる。監修(基本計画を含む)は、岡山大学の特別招聘教授であり世界的建築家でもある隈研吾氏が担い、設計・施工を清水建設が担当している。
今回の計画では、カーボンニュートラルと脱炭素社会の実現に貢献することや国内最大のCLT生産能力を有する岡山県の地域産業を活性化することを目的に、環境に優しい木質系材料のCLTを構造材とするCLTパネル工法を採用した。
加えて、施設の機能面では、コンセプト「地域の産業活性化のための新たな交流と共創の場」を掲げ、2階に300人を収容する大講義室を配置し、1階に共創ラボ機能を担う多様な研究スペースを設ける。
施設の設計にあたっては、CLTパネル工法では前例がない18×21.6メートルの無柱大空間を実現する「CLT大梁ジョイント・メタルレス構法」やCLTパネルの立面と平面的な配置の自由度を向上させる「CLTランダムパネル構法」といった技術を開発し、適用している。
CLT大梁ジョイント・メタルレス構法は、CLT製の大梁)で大スパン架構を達成する構造技術で、部材の接合部に木質系の挿入材と構造ビスを用いた継手を採用することにより、金物で構成する従来の継手と比べ、初期剛性の低下を抑制した接合構造を実現した。
加えて、岡山大学共育共創コモンズへのCLT大梁ジョイント・メタルレス構法の導入では、CLTの生産性と搬送面での制約を考慮し、3分割した部材を現場で接合してスパン18メートルのCLT大梁を形成する他、10本のCLT大梁を2階東西面のCLT壁パネルにおけるスリットに差し込み、18×21.6メートルの大講義室上部を覆う大屋根を支持させる。
一方、CLTランダムパネル構法は、2階の床に配したRCスラブの一部に梁型を設け、この梁型を介して上層のCLTから下層のCLTまで地震力を伝達させる。これにより、壁パネルの立面配置が上下階で異なる構造計画が可能になり、各階の用途構成や外観デザインに応じた自由度の高いパネル配置が行える。
また、岡山大学共育共創コモンズでは、CLTランダムパネル構法と、CLTをRCスラブの型枠兼天井仕上げ材として使用する「ハイウッドスラブ構法」を併用し、音振動環境・防耐火性能に優れた木質構造を具現化する。
さらに、CLT建築の新たな可能性を追求する上記の取り組みが評価され、岡山大学共育共創コモンズの開発プロジェクトは、国土交通省が主管する「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された。
岡山大学共育共創コモンズは、木造(CLTパネル工法)2階建てで、延べ床面積は820平方メートル。所在地は岡山県岡山市北区津島中3丁目1番1号で、建物用途は大学校舎。設計・施工は清水建設が担当し、工期は2022年3〜12月。
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