菌とウイルスの除去に特化した空調システムの共同開発を開始、鹿島と日機装導入事例

鹿島建設は、日機装とともに、感染症対策に配慮した空調システム「Stela UVC(商標登録出願中)」の共同開発を開始した。既に、両社は、神奈川県横浜市の再開発地域「横浜みなとみらい21」内にオープンしたオフィスビル「横濱ゲートタワー」の一部エリアにStela UVCのコンセプトモデルを試験導入し、実証を進めている。

» 2022年09月28日 13時00分 公開
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 鹿島建設は、日機装とともに、感染症対策に配慮した空調システム「Stela UVC(ステラユーブイシー)」の共同開発を開始したことを2022年9月15日に発表した。

今後は大型業務ビルなどでも採用可能な大風量帯の製品をラインアップに追加

 国内では新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、空気に対する一般消費者の意識は変化し、建物の空気環境対策への関心が高まっている。

 一方、事務所や商業施設、住宅、生産施設といった建物の設計と施工を担う鹿島建設は、建物の利用者に、安全で安心な空気環境を提供するため、空間除菌消臭装置の開発を手掛ける日機装をパートナーに選定し、菌・ウイルスの除去に特化した空調システムであるStela UVCの共同開発に踏み切った。

 Stela UVCは、ダクト接続型のUVユニットを組み込んだ空調システムで、UVユニットには深紫外線LED「SumiRay※1」を搭載しており、循環する空気に深紫外線を効率的に照射して空気中の菌とウイルスを除去し、室内の空気を清浄化する。

※1 SumiRay:日機装では、紫外線の波長の中でも除菌効果が高いとされている「波長260〜315ナノメートル」で、「寿命は1万時間以上」で「日本産」という基準を満たす深紫外線LEDだけを「SumiRay」と呼称し、性能、品質、安全の証としている。

空調システムの概念図 出典:鹿島建設プレスリリース

 具体的には、深紫外線(100〜280ナノメートル)を空気に直接照射することで、業務用空調で使用されているフィルターでは捕集しづらい小さな菌とウイルスへの効果が期待できる。

 活用している深紫外線は、紫外線の中でも高い除菌効果を持つため、有用な除菌方法として注目されている他、Stela UVCのUVユニットでは、鹿島建設からの助言を基に日機装が適切な深紫外線LEDの個数と配列を検討し、通過する空気をより効率的に除菌するように設計している。

UVユニットの外観(左)と深紫外線LEDによる除菌のフロー(右) 出典:鹿島建設プレスリリース

 さらに、これまで深紫外線の発光体には水銀ランプが使われてきたが、人体や環境への影響を踏まえた「水銀に関する水俣条約」により、今後の継続的な使用が難しくなってきていることを考慮し、Stela UVCのUVユニットには、水銀ランプを用いていないLEDを採用しているため、コンパクトで省エネルギーと長寿命を実現している。

 また、深紫外線を直視しないようにダクト内に組み込むため、人体への影響もない。加えて、空調システムには、建物の特性や用途に合わせたりバリエーションを用意する。なお、鹿島建設では、保有する技術研究所での気流実験で得たさまざまな知見とノウハウを蓄積しており、多様な空間に適した空調システムの提案が行える。

 今回の取り組みに関しては、早稲田大学創造理工学部建築学科の田辺新一教授と杏林大学医学部付属病院呼吸器内科の石井晴之教授にアドバイスを受けているだけでなく、神奈川県横浜市の再開発地域「横浜みなとみらい21」内にオープンしたオフィスビル「横濱ゲートタワー」の一部エリアにStela UVCのコンセプトモデルを試験導入し、実証を進めている。

 今後は、大型業務ビルなどでも採用可能な大風量帯の製品をラインアップに追加することで、新築や改修の工事を問わず、Stela UVCを建物所有者に提案していく。

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