アズビル、村田製作所、戸田建設は、「暑い」「寒い」といった体感情報を専用のカード型デバイスなどで申告できる空調システムを開発した。室内の気温と申告の内容に応じて、空調を最適に制御できるという。
アズビル、村田製作所、戸田建設の3社は2017年9月20日、「申告型空調システム」の共同実証実験を開始したと発表した。オフィスなどにおいて、執務者が感じている「暑い」「寒い」といった室内環境に対する要求を、無線機能を搭載するカード型インタフェースで収集し、それに応じて室内温度を最適に制御するという。各社の研究施設などに導入し、快適性や省エネ性を評価する。
一般的なオフィスの空調設定は、必ずしも全員の体感温度を反映しているといはいえないことが多い。例えば、食事後や外出先から帰社したばかりの人は、代謝量が上がっており、平均的な室温でも「暑い」と感じることがある。しかし、こうした特定の人の一時的な「暑い」という要求に応え、変更した設定値がそのまま放置されてしまうと、今度は代謝量が落ちたときに「寒い」と感じてしまうといったことも起こる。
申告型空調システムは、執務者が申告した要求が、一時的なものか、継続的なものであるかを判別し、空調設定温度に反映させる「申告判別機能」が特徴となっている。「申告」が一時的な要求と判断した場合は、一時的に温度を変化させ、一定時間後、徐々に温度を変化前に戻す。これにより、申告者の快適性を保ちつつ、冷え過ぎや暖め過ぎを防ぐと同時に、他の居住者の快適性も損なわない室温調整が可能になるという。
判別の基準は、例えば、室温が低い環境において「暑い」という要求が来た場合、その要求はその人固有の要求であり、一時的な申告であると判別する。反対に室温が高い環境で「暑い」という要求が来た場合には、継続的な申告であると判断する。出勤直後や昼食後など、人の行動により代謝量が一時的に変化している時間帯の申告は、一時的な申告であると判別する。
申告は、社員証用のネックストラップに収納可能なカード型のユーザインタフェース通して行う。PCやスマートフォンからも申告可能だ。執務者はいつでも自らの「暑い」「寒い」といった体感を、周囲に遠慮することなく申告できるようにする狙いがある。無線信号の強度で最寄りの空調設備の位置を自動的に判別し、執務者に最も近い設備を自動的に制御する仕組みとなっている。
実証実験はアズビルの「藤沢テクノセンター」、村田製作所の「長岡事業所」、戸田建設の「筑波技術研究所」の3カ所で、2018年3月まで実施する。異なる環境で検証を進め、2018年10月をめどに実用化する方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.