地盤改良工事の必要/不要の判定方法と「地盤補償ビジネス」が変えた地盤調査の在り方災害大国ニッポンを救う地盤調査技術(2)(1/3 ページ)

本連載では、だいち災害リスク研究所 所長の横山芳春氏が、地震や液状化などの予防策として注目されている地盤調査について解説します。第2回は、スクリューウェイト貫入試験で得られたデータがどのような調査報告書になるか、地盤改良工事の必要/不要の判定がどう判断されているかについて説明します。

» 2022年09月12日 10時00分 公開

 連載第2回では、地盤調査の主流である「スクリューウェイト貫入試験(以下、SWS試験)」で得られたデータがどのような調査報告書となって、地盤改良工事の必要/不要の判定がどう判断されているか、地盤の補償(保証)を含めた地盤調査ビジネスの流れについて解説する。

SWS試験で何を調べているか?

 新築時に実施されるSWS試験(調査手法は連載第1回で説明)で調べていることは、建物が不均質に地盤に沈んでいく不同沈下が生じ、建物の傾きが発生しないかだ。

 具体的には、「建物の重さで地盤が沈むことはないか」と「土が圧縮することで徐々に沈下が進むことはないか」の2点をリサーチする。こういった調査の結果をもとに、地盤改良工事を行う必要があるかないかを判断している。

 木造戸建て住宅の新築時を対象としたSWS試験による地盤調査では、一般に建物の四隅と中央部の5点以上を調べ、表1のような調査結果を得る。こういった各調査地点の結果は「地盤調査報告書」に記載される。

表1 SWS試験結果の例(赤色/青色はポイントとなる「自沈層」を示す)

 なお、実際には、SWS試験で得られた数値だけでなく、その場所が川沿いの低地や高台の台地、丘陵地にあるかなどの地形区分、その土地の盛土など造成の履歴、周辺の宅地や道路に地盤調査を示す兆候はないかなど、総合的な観点から地盤改良が必要か不要かを判断している。

 先述した、土が圧縮することで、徐々に沈下が進むことはないかの指標は、調査報告書に記載される項目が相当する。それは、SWS試験で得られる軟弱地盤を示す「自沈層」だ。自沈層とは、「半回転数Na」の数値が0となるケースを指し、地盤調査報告書の項目「荷重Wsw(キロニュートン/kN)」では1.00、0.75、0.50、0.25kNのいずれかが記されるが、この数値が小さいほど自沈層が軟弱だといえる。

 さらに、自沈層が住宅基礎の底面から下方2メートルまでの地盤にあるか、基礎の底面から下の2〜5メートル間にある地盤に0.5kN以下の自沈層がないかをチェックすることが重要となる。このような自沈層があった際には、国の示す告示で、建物の変形や沈下などが発生しないことを確かめなけばならないとされている。

 表1では、住宅の基礎底面が地表から0.25メートル下にある場合を仮定し、そこから下に2メートルの範囲(2.25メートルまで)を赤い枠で、基礎底面から下に2〜5メートルまで(具体的には2.25〜5.25メートルまで)を青い枠で囲んでいる。この事例では、赤い枠で囲んだ基礎底面下の2メートルまでの範囲に自沈層が連続しており、しかも軟弱な0.5kNの自沈層が3深度(3マス/0.75メートル)に渡って連続して存在することから、地盤改良が必要となりやすいデータだと分かる。

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