特定地域の地盤や建物が地震でどれだけ揺れるか調査可能な新サービス製品動向(1/3 ページ)

地域微動探査協会は、地盤と建物ごとに、地震波の周期や増幅の特性を調べられるサービス「常時微動探査法」と「ハイブリッド微動探査」を開発した。

» 2020年07月17日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 地域微動探査協会は2020年7月10日、都内で記者発表会を開催し、地盤と家屋の耐震性測定に使える「常時微動探査法」と「ハイブリッド微動探査」の提供を始めると公表した。常時微動探査法は2020年11月中に、ハイブリッド微動探査は2021年4月中にサービスを開始し、戸建て住宅を対象に訴求していく。

 会場では、地域微動探査協会 会長 戸成卓二氏や防災科学技術研究所 先名重樹氏、応用地震計測の梶原実氏などが、両サービスの概要や南海トラフと首都直下の地震で被害を受けやすい宅地向けのサービス概要を紹介した。

特定地域の地盤増幅率は調査しなければ不明

地域微動探査協会 会長 戸成卓二氏

 内閣府の発表によれば、今後30年以内に、マグニチュード7クラスの首都直下地震が70%の確率で発生すると予測しており、死者・行方不明者数は約2.3万人、住宅全壊は約61万棟に及び、避難者は約720万人にも上ると推定している。

 また、これから30年以内に、マグニチュード8〜9レベルの南海トラフ地震が起きる確率は70〜80%で、死者・行方不明者数は約32.3万人、住宅全壊は238.6万棟に達し、避難者は約210〜430万人になると想定している。

 地域微動探査協会の戸成氏は、「多くのユーザーが今回の常時微動探査法を活用したサービスを利用して、住宅の耐震補強に生かすことで、地震が起きても全壊しない物件が増える」と語った。

防災科学技術研究所 先名重樹氏

 次に登壇した防災科学技術研究所の先名氏は、「常時微動探査法を知る上で、地盤増幅率について理解する必要がある。地盤増幅率は、地表面近くに堆積した地層が、地震時に揺れる大きさを数値化したもので、地震に対する地盤の弱さを示す。数値が大きいほど地盤は弱く、揺れは大きくなり、堆積層が厚い部分で振動が増長する傾向がある」と説明した。

 続けて、「防災科学技術研究所が公開している国内の地盤増幅率は、全国の地形区分に合わせて算出した平均値のため、地域特性が分からない。ユーザーが住む地域の地盤増幅率を調べるためには、常時微動探査法などを使用しなければならない」と補足。

 さらに、地面で観測される地震波は、地盤によって振幅の大きさや周期が変化し、建物のサイズや種類によっても揺れ方は異なるため、地盤と建物ごとに、地震波の周期や増幅の特性を認識しておくことが効果的な地震対策につながる。

地震時の地盤の増幅特性
地震時の揺れ方の違い
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