地盤改良工事の必要/不要の判定方法と「地盤補償ビジネス」が変えた地盤調査の在り方災害大国ニッポンを救う地盤調査技術(2)(2/3 ページ)

» 2022年09月12日 10時00分 公開

同じ調査結果から地盤改良が必要/不要と判断が分かれるケース

 地盤調査の結果が同じであるにもかかわらず、地盤改良の必要と不要に関する判定が分かれることがあるが、それはなぜだろうか。原因を解説する前に、地盤改良が必要か不要かを判断する手段について触れておく。

 まず、判定方法に関して、地盤改良の必要/不要の判断では、下記の表2に示す国の告示に定義された「長期許容支持力度」の数値が重要視されている。長期許容支持力度は、SWSの試験結果に応じて求められ、建物の重さで地盤が沈むかどうかの強さを示す専門用語。

表2 平成12年建設省告示第1347号によるSWS試験による長期許容支持力度と基礎の形式

 一方、地盤調査で対象の土地が「基礎ぐい」と判断された場合には地盤改良が必要とされ、基礎形式が「べた基礎」と「布基礎」だった際には、地盤改良工事は必要ない。ちなみに、最近の住宅は、住宅の底面全域に鉄筋コンクリートを流し込むべた基礎の建物が多い。

 なお、表2のように長期許容支持力度が1平方メートル当たり20kN以下であれば基礎ぐいで、地盤改良が必要になる。しかし、1平方メートル当たり20kN以上は、基礎ぐい(地盤改良)とべた基礎のいずれかで、1平方メートル当たり30N以上は、基礎ぐいやべた基礎、布基礎のいずれで判断しても良いとされる。

 こういった値は、言い換えれば地盤改良工事を行っても行わなくても良い数値で、地盤改良工事の不要と必要の判断が分かれる要因の1つとなっている。

 具体的には、長期許容支持力度の数値と前述した自沈層の地盤調査結果から、地盤改良工事が必須となることが多い地盤の特徴は、以下のケースとなる(数値が良くとも、造成履歴や地形などにより地盤改良が必要と判断されることもある)。

  • 低地の谷底低地や旧河道、埋立地などの地形に位置している
  • 傾斜のある地域などで盛土地/谷埋め盛土地である。特に擁壁があって埋戻し土や敷地内に切り盛り境界がある
  • 造成などによる新規盛土が25センチ以上あって、造成後の期間が短い(短いほど要注意)
  • 周辺に地盤沈下が既に発生している地域である
  • 土質に腐植土層がある
  • 基礎底面より下方2メートルに1kN以下の自沈層がある(特に低い荷重の自沈が連続する)
  • 基礎底面より下方2〜5メートルに0.5kN以下の自沈層がある(特に低い荷重の自沈が連続する)
  • 自沈層の厚さが敷地内で大きく異なっている(ある一方が軟弱)
地盤改良工事が発生しやすい地形条件(赤色の場所)

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