フジタは、河本組と共同で、ダム湖の水質を汚濁させることなく、底にたまった土砂(堆砂)を20メートル以上の吸い上げ高さ(揚程)で除去可能な「ハイリフト無濁浚渫工法」を開発した。ハイリフト無濁浚渫工法は、高性能な真空発生装置や泥土を搬送するために独自開発した中継ポンプユニット「高濃度攪拌ポンプ」を搭載したハイブリッドシステムで、真空吸引のみでは不可能とされていた水上10メートル以上の揚程でも効率よく堆砂を除去でき、作業に伴う水質汚濁の発生を抑えられる。
大和ハウスグループのフジタは、河本組と共同で、ダム湖の水質を汚濁させることなく、底にたまった土砂(堆砂)を20メートル以上の吸い上げ高さ(揚程)で除去可能な「ハイリフト無濁浚渫(しゅんせつ)工法」を開発したことを2022年8月8日に発表した。
現在、堆砂により機能が低下しているダムは、全国に100基以上存在し、早急な対策が望まれている。しかし、これまで堆砂を取り除くには、小型浚渫ポンプ船によりダム湖の水を抜くなどして、除去する方法が一般的で、汚濁の発生が避けられなかった。
一方、真空吸引による堆砂除去の方法では汚濁は発生しないが、水深が深いダムなどでは使えないという課題があった。そこで、フジタは河本組と共同でハイリフト無濁浚渫工法を開発した。
ハイリフト無濁浚渫工法は、湖底に接触する吸引部に水中掘削機付き吸引機を搭載した2基の高トルク水中掘削機で、湖底に堆積した土砂や粒径40ミリ以下の砂礫を掘削する。その後、土砂が拡散する前に、吸引することで作業中の汚濁発生を防ぎながら堆砂を回収。さらに、装着された高濃度攪拌ポンプを併用することで、20メートル以上の揚程(ようてい)がある場合でも高い搬送能力を発揮する。
加えて、使用する設備は、細かく分けられ運搬性に優れる他、大規模な設備が不要で、コンパクトな施工が行え、さまざまな条件に応じる。具体的には、浚渫作業で、真空発生装置と高濃度攪拌ポンプの併用により吸引・搬送作業が行えるだけでなく、毎分最大10立方メートルの処理能力を持つ大型の連続泥土回収タンクを使用することで、従来必要だった吸引作業と土砂排出作業の切り替え動作を改善し、長時間の連続吸引作業を可能にした。
また、施工管理では、GNSS(全球測位衛星システム)を活用したICT施工管理システムにより、各所に取り付けたセンサーの数値や施工位置、施工履歴などの施工データをオペレーター室で管理できるようにしているため、リアルタイムに施工に反映させられる。
既に、フジタは、広島県内にある4基のダム(梶毛ダム、土師ダムなどの電力系ダム)に隣接する湖でハイリフト無濁浚渫工法の実証実験を実施している。
実証実験では、水深20メートルで、水上10メートルから堆砂除去が行えることを確かめただけでなく、中間に高濃度攪拌ポンプを増設することで、水深が深いダム湖にも対応することが判明した。浚渫の作業能力に関しては、1日当たり625立方メートルの搬送を実現し、従来の小型浚渫ポンプ船と同等の能力で処理することが分かった。
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