国土交通省は、ICT活用工種の拡充や関連基準の整備を進めるとともに、ICT土工の現状を積極的に業界関係者へ発信している。
国土交通省関東地方整備局は2019年7月19日、埼玉県秩父市の日本キャタピラー秩父D-Techセンターで、「第2回i-Construction施工セミナー」を開催。今回は、小規模施工でICT建機を使用し生産性を高めることをテーマにした。
本稿では、当日の講演の内、国土交通省関東地方整備局 関東技術事務所 施工調査・技術活用課 課長の加藤浩志氏が行った「i-ConstructionにおけるICT施工技術の取り組みについて」を取り上げる。
はじめに、加藤氏はi-Constructionの概要について紹介した。業界は、バブル崩壊後、建設投資が労働者の減少を上回って、ほぼ一貫して労働力過剰となり、省力化につながる取り組みが見送られ、生産性が低迷。ダムやトンネルなどの工事は、約30年間で生産効率を最大10倍に伸ばしたが、直轄工事の全技能労働者の約4割を占める土工やコンクリート工は改善の余地があり、パファーマンスは対米比で約8割に止まっている。
全産業と比べて、2倍の死傷事故率と依然として多い労働災害。技能労働者約340万人の内、約110万人の高齢者が今後10年間で離職が予想されており、将来的な人手不足が懸念されている。
こういった課題の解消を目指してスタートしたプロジェクトがi-Construction。このプロジェクトでは、調査・設計から施工・検査、さらに維持管理・更新までの全ての工程にICT技術を導入することや寸法などの規格が標準化された部材の拡大、下半期に偏り不安定な就労形態を助長していた施工時期の標準化を行い、プロセス全体の最適化を目指している。
次に、2019年現在のICT土工のワークフローについて説明した。ICT土工の作業手順は、まず、ドローンなどで写真撮影もしくはレーザースキャンを行い、短時間で高密度な3次元測量を行う。次に、3次元測量データ(現況地形)と設計図面との差分から、切り土や盛り土量を自動算出する。続いて、3次元設計データで、ICT建機を自動制御し、施工を進めていく。最後に、ドローンなどの3次元測量を活用した検査で、出来形の書類を不要とし、点検項目を半減する。
これまでの方法と比較して、設計図からの施工土量の計算や丁張りの設置、書類による調査といったプロセスを減らし、人員や業務時間の削減を実現している。
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