マッハシステムでは、冷房時にも、一般的な全館空調システムのように室温を大きく下回るような冷気を作らない。そのため、各所に空気を送るダクトは、最低限の断熱材しか使われていない「微断熱ダクト」が採用されている。
FHアライアンス会長の廣石氏は、「普通は25ミリ厚の断熱材のダクトを使うが、マッハシステムのダクトは5ミリ厚の断熱材。それでも結露が無いので、ホコリが付着しない」と話す。また、一般的なダクトが外径200ミリなのに対し、断熱材が薄い分細いダクトは、天井裏などの取り回しでも有利と説明。さらにダクトは内径も太くなっており、それによって送風時の圧力損失が減り、電気代も抑えられる。
ちなみに、内径が5ミリ太くなれば、圧力損失は20%ほど下がる。室温に対して、結露が発生しない程度の少温度差の空気を扱うマッハシステムは、結露や電気代、施工のしやすさなど、多くの面でメリットを備えている。
マッハシステムのような空調設計は、かつてはタブーとされていたそうだ。廣石氏は、可能になった要因として2点を挙げる。住宅の品質が良くなったことと、マッハシステムで使える機器が登場したことだ。
今回、マッハシステムが導入されたモデルハウスは、渡邊工務店が愛知県一宮市丹陽町のナゴヤハウジングセンター一宮会場に建築した。1907年設立の渡邊工務店は木造住宅を得意とし、一般住宅の他に社寺なども扱う。マッハシステムが導入されたモデルハウスも、無垢材が多用された木造だが、住宅の性能としては断熱性と機密性に優れ、耐震性にも配慮が行き届いている。
少温度差の空気を循環させるマッハシステムにとって、断熱性は重要だ。今回公開されたモデルハウスは、Q値(熱損失係数)が1.29。Q値は数値が小さいほど、断熱性能が高いことを示すが、関東地方では次世代省エネ基準レベルとしてQ値2.7が目安とされている。マッハシステムの導入は、この高い断熱性能が前提となる。
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