大成建設は、建築物のライフサイクルで生じるCO2の概算値を短時間で容易に算出するツール「T-LCAシミュレーターCO2」を開発した。T-LCAシミュレーターCO2は、建築物のライフサイクル「調達、施工、運用、修繕、解体」で生じるCO2排出量や削減効果を、建築物の初期計画段階からライフサイクルまでの概算値として算出することが可能で、顧客のCO2排出削減目標を意識した建設計画を支援し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。
大成建設は、建築物のライフサイクルで生じるCO2の概算値を短時間で容易に算出するツール「T-LCAシミュレーターCO2」を開発したことを2022年5月30日に発表した。
国内では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物のライフサイクルにおいて発生するCO2を把握し削減させることは、施工者だけでなく建築物を所有・運用する顧客にとっても必要な取り組みとなっている。
しかし、現在、建築物のライフサイクルにおけるCO2を算出するツールは少なく、既存ツールを活用してもデータ入力や計算に手間と時間がかかるため、建築物の初期計画段階からライフサイクルCO2を容易に算出するツールが求められていた。
そこで、大成建設は、建築物の初期計画段階でもライフサイクルに応じたCO2排出量や削減効果などの概算値を導き出すT-LCAシミュレーターCO2を開発した。
T-LCAシミュレーターCO2の評価項目は、「調達、施工、運用、修繕、解体」の段階に分類され、ライフサイクルCO2削減に貢献する主要な40項目の取り組みについて、5つのレベルから選定し、CO2排出量や削減効果の評価値を算出する。
とくに運用段階は、全体におけるCO2排出量の占める割合が大きく、他の段階に比べて正確性が求められるため、Webプログラム(建築物のエネルギー消費性能計算プログラム※1)と連携させることで、数値を弾き出す。
※1 建築物のエネルギー消費性能計算プログラム:建築物省エネルギー法で規定された非住宅建築物の省エネルギー基準(平成28年度基準)への適合性を判定するためのもの。「外皮・設備仕様入力シート」に設計した建築物に関する情報を入力した後、今回のプログラムにアップロードすれば、当該建築物の「設計一次エネルギー消費量」と法律で規定された「基準一次エネルギー消費量」の値を得られる。
具体的には、LCA指針※2に準拠した評価体系は維持しつつ、大成建設独自の評価手法と蓄積したノウハウを利用することで、絞り込んだ40項目から、短時間で容易に概算値を算出し、評価する。
※2 LCA指針:1997年のLCA国際規格化(ISO14040)に伴い、建築分野のLCA実用化に向けた検討が日本建築学会で実施され、1999年に「建物のLCA指針(案)」が発行された。それ以降、最新の情報を踏まえた評価手法やデータベースの追加・更新などが継続されており、2006年に建築物のライフサイクルでの環境負荷を評価するための指針とツールが「建物のLCA指針−温暖化・資源消費・廃棄物対策のための評価ツール−」として発行され、2013年に改訂されている。
さらに、大成建設のZEBに関する豊富な実績と知見を基に、省エネルギー設備や実施内容などの評価項目を設定し、その適用率(一部仕様)を入力するだけで、エネルギー削減量や省エネルギー性能指標(BEI)の算出が可能となり、ZEBの簡易評価にも使える。
加えて、算出結果として、横軸に年数、縦軸に累積のCO2排出量を表示し、建築物のライフサイクルにおける各段階で排出したCO2の削減状況などを視覚的に把握することを達成して、CO2削減率に応じてランク付けして評価する他、対象の建築物に適用し、建築物ライフサイクルの各段階に設定されたCO2削減策を選択することで、CO2排出量や削減効果が算定可能なため、初期検討段階からCO2削減策を考慮した検討を実現する。
今後は、実案件にT-LCAシミュレーターCO2を適用することで、算出精度の検証と向上を図り、2022度半ばまでには実運用を開始する予定だ。また、新規・改修案件でT-LCAシミュレーターCO2を利用しながら脱炭素技術の提案・導入を推進していく。
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