一方、感染症対策と省エネに配慮した換気制御では、コロナ禍以降は感染症の予防として換気の重要性が高まり、換気機能を変更する必要が生じた。同時に、テレワークなどの浸透で、多様な働き方がオフィス空間にも求められるようになり、対応可能な省エネの仕組みも求められるようになった。
省エネに配慮した換気で欠かせないのは、必要な換気量を維持しつつ、無駄のない運転をさせることだ。特に、在宅勤務の一般化でオフィス内に人が少ない日や逆に混雑する時間帯が混在する現在のオフィス環境では、それぞれに応じた換気制御を考慮しなければならない。
その点、広島中町ビルは、オフィス内の在籍人数をセンサーで検出し、換気量を制御するシステムを採り入れた。これにより、適正な換気量を維持しながら、在籍人数が少ないときには省エネを優先にした運転ができるようになった。省エネ運転の効果は、実証が進められており、局所的に密となったスポットでも集中的な換気が行えるように、新たな仕組みを別途検討している。
また、カラー照明と空調の連動制御では、色が人に与える視覚的なイメージを利用して、体感的に涼しさ/暖かさを感じさせる試みも検討されている。
会議室などの温度を部屋のリモコンで設定する場合は、リモコンの操作後に空調機が起動して、設定した温度になるまでには若干の時間を要する。照明色と空調の連動では、空調が本格的に稼働を始めて部屋が変化するまでの間、部屋の照明色を変化させて人が感じる暑さや寒さを和らげようとする。
照明色と空調の連動は、空調とカラー照明をクラウドで連携させることで実現している。例えば夏季には、会議室の空調リモコンで冷房をONにすると、直ちに壁の照明で青色など寒色系の色を表示し、清涼感を演出。その後、空調が機能して冷房が始まると、一定時間の経過後に青色の照明を消灯し、業務に集中できる環境となるようにしている。
広島中町ビルの省エネは、汎用性のある高効率機器で、継続的な設備改修と基本に忠実な省エネ活動によって成立しており、他の企業でも応用できる汎用性が高い取り組みといえる。実績値としては、2020年度のエネルギー使用量で、2008年度と比べ49%の削減を達成した。しかし、省エネに関する活動は今後も弱めることなく継続し、前年度比で1%減らす計画だ。だが、前年度比で、1%削減を毎年続けるには、単純に考えても高いハードルだ。パナソニックが今後どのような施策を打ち出すかに注目していきたい。
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