オフィスビルの“省エネ”はこうやるべし!省エネ大賞に輝いたパナソニックの「広島中町ビル」に潜入FM(2/3 ページ)

» 2022年05月24日 06時12分 公開
[川本鉄馬BUILT]

広島中町ビルは、FMも含む総合的な省エネを実現

 パナソニックの広島中町ビルでは、従前より省エネへの取り組みを続けてきた。ビルの竣工は1996年8月だが、その時点でガスと電気を最適にミックスして使う熱源と高効率の機器を導入している。運用開始後にも、省エネに対する活動を継続し、2004年にはBEMSで省エネ活動を強化した。2009年度には、省エネ活動によって余力が生まれた電力設備に合わせて、空調熱源を全て電化にする改修を実施。ビル全体で、LED照明への更新や老朽化した空調機器を省エネタイプへリニューアルするなどの工事を行った。

パナソニック ファシリティーズ(PFC) 木村博保氏。省エネ大賞の受賞で、PFCはファシリティマネジメントのうち設備管理で貢献

 今回の受賞は、2009年以降に実行した複数の取り組みが結実したものとなる。評価には、省エネ機器の導入と併せて、ビル運用関係者の活動や姿勢も含まれる。その代表的な活動が「CB」だ。

 CBは“コストバスターズ”の意味で、「無駄を削減して経営体質の強化を図る」活動を指す。CBのネタになるものは、従業員がみんなで探し、得られた提案や現場の声などを定例のビル運営会議で検討する。

 広島中町ビルでも、CBと省エネを連携させることで、運用の無駄を効率良く見つけた。また、このCBの仕組みは従業員や関係者間で省エネ意識を醸成することにも役立ったようだ。

 広島中町ビルは、2003年に環境ISO(ISO14001)の認証を取得している。先に触れた省エネ機器・設備の導入と併せ、このISO組織体制下での人事・総務・入居者・ビル管理会社などが一体となった省エネ活動も受賞の理由となっている。

広島中町ビルの省エネに向けた取り組み。省エネ大賞は2009年〜の活動が評価されたものだが、省エネの取り組みは竣工の1996年から行われている

働き方改革にも対応した、新しい形の省エネを模索中

広島中町ビルの受賞について概要説明を行うパナソニック エレクトリックワークス社 貝柄学氏

 では、現在の広島中町ビルにどのような省エネ対策が施されているのか?

 広島中町ビルでは、竣工時からの対策によって確実に省エネ効果を上げてきた。しかし、昨今は新型コロナウイルス感染症の対策や働き方改革の潮流で、多様な働き方がオフィスの空間に求められるようになった。そのため、2020年のビル改修工事に伴い、省エネ機器をリニューアルし、現在はその効果を実証している。

 現在の広島中町ビルは、感染症対策や働き方改革に加え、エネルギーを抑えたビル運用も両立させている。今回は、その一例として、天井照明のシステム化と感染症対策を見据えた換気制御、カラー照明と空調の連動を紹介しよう。

 天井照明のシステム化については、照明のLED化を2011年度から進め、2019年度までに約1600基のLED照明を交換し、年間の消費電力を20万4321kWh(キロワット時)から8万7925kWhまでに削減した。電力削減率でいえば約57%、原油換算で29.9kL(キロリットル)の削減に相当するという。

 2020年の改修では、LED照明に、配線ダクトやタスク・アンビエント照明を組み込んだシステム照明を採用した。システム照明は、照明部に配線ダクトを備え、工事不要のために、頻繁なレイアウト変更にも柔軟に対応できる。また、タスク・アンビエント照明により、執務に必要な明るさを確保しながらの省エネが可能となった。

4階の執務スペースに設置されたLED照明。4階は、アイデアをシェアするから「Sharedea(シェアディア)」と名付けられ、執務に集中できるようデザイン
部屋全体を照らすLED照明。執務室内の必要なエリアのみを照らすタスク・アンビエント照明。配線ダクトがシステム化されている
システム照明の配線ダクトからは、コンセントを垂らして、電源を取ることも可能。働き方の変化によって、多様なレイアウト変更にも柔軟に応じられる
コミュニケーションが取りやすい空間としてデザインされた5階スペース。森の中でリラックスするような空間で、自然体でおしゃべりや意見交換ができるコミュニケーションの場として、「Commu(コミュ)」の名称で呼ばれている

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