清水建設は、高エネルギー放射線医療施設の遮蔽設計時に必要な放射線の遮蔽性能評価を、一般の設計者でも簡易に行えるアプリ「SC-HoRS」を開発した。SC-HoRSでは、独自の簡易式自動計算機能により、放射線遮蔽室と放射線治療装置の仕様を入力するだけで、放射線の遮蔽性能評価が行える。
清水建設は、高エネルギー放射線医療施設の遮蔽設計時に必要な放射線の遮蔽性能評価を、一般の設計者でも簡易に行えるアプリ「SC-HoRS」を開発したことを2022年4月27日に発表した。
国内では、高齢化の深刻化や食生活の変化により、がんや脳疾患の罹患者数が増大する中、身体への負担が少ない放射線治療が普及している。一方、病院の新設や改修の際には放射線治療装置の導入が標準化しつつあり、放射線遮蔽室へのニーズが高まっている。
放射線遮蔽室は、管理区域外への放射線漏えいを基準値以下に抑えるため、コンクリートと鉄板を併用した厚さ1メートルを超える遮蔽壁で覆う必要がある。このため、遮蔽設計は、部屋の形状や装置の性能などに対応した、複雑な計算による設計が求められていた。しかし、簡易式の計算手法もあるが、過剰な安全裕度を見込んで遮蔽壁の壁厚や鉄板量を設定しなければならず、建設コストが膨らむ要因となっていた。
そこで、清水建設は、遮蔽室の形状や装置の性能を入力するだけで放射線遮蔽性能を自動計算し、最適設計が可能になるアプリのSC-HoRSを開発した。
SC-HoRSの開発では、病院施設設計の知見や既存の手法を分析し、合理的な設計が可能になる独自の簡易式自動計算手法を確立し、この手法をさまざまな端末で使えるアプリとしてソフトを構築した。
SC-HoRSは、活用することで、専門家による最終的な総合評価が必須ではあるものの、これまで専門家の計算によって数週間かかっていた評価が、一般の設計者でも数時間で行える。さらに、安全性を確保した上で、遮蔽壁の鉄板量や壁厚のスリム化を図れるため、従来手法と比べて、建設コストを10〜20%カットする。
加えて、これまでは困難だった複雑な形状の施設設計やレイアウト変更時における治療装置の配置検討などにも柔軟に応じる。
また、米国では、がん患者の約70%が放射線治療を受療しているが、日本では依然として30%程度となっているため、清水建設ではSC-HoRSを利用し、今後も需要が見込まれる放射線医療施設の建設受注拡大を目指す。
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