現部会長は、野瀬かおり氏(ファシリティマネジメント総合研究所、元富士通)が務めています。歴代の部会長は、荒井和弘氏(大成建設:当時)、筆者・成田一郎(前同)、塩川完也氏(NTT都市開発:当時)などです。
品質評価手法研究部会は、1990年代より活動を開始し、ファシリティマネジャーができるだけ定量化してオフィスの品質を評価できるようにと、「JFMA品質評価手法1997」を作成し、その後、オフィス利用者の立場で満足度を評価する「JFMA満足度評価手法2000」をまとめました。2002年には、「JFMA品質定量評価手法2002」「JFMA満足度評価手法2002(10minutes survey)」として調査票を改定し、2003年にはそれらも盛り込んだ部会報告書「ファシリティの品質を考える」(A4判、p195)を発行しました。
その後、2012年には、「FM品質から見るオフィス評価項目−オフィスビルを借りる時、ワークプレイスを構築する時−」、東日本大震災を踏まえたファシリティに関するアンケート調査報告書などを刊行し、さらに自治体庁舎のオフィスビルの評価項目や環境配慮としての木材利用、品質から考える防災やトイレの評価など、2020年4月には、JFMAからのメッセージ「コロナに勝つ!」のなかで、部会員所属の企業の取り組みなど、多様な形でファシリティ品質を評価する研究成果を発表しています。
このように、品質評価手法研究部会では時代やニーズに即した活動を行っていますが、現在の活動内容を、野瀬部会長が2022年のファシリティマネジメントフォーラムで発表した概要から引用します。
1980年代にファシリティマネジメントという概念が日本に紹介されてから30年余りが経ちました。その間、時代の流れとともに、求められるファシリティ品質も変化してきました。
バブル景気に沸きそして崩壊した1990年代までは、オフィスの一人当たり専有面積や電話の台数などの基準作りが行われ、快適性・機能性が重視されました。2010年頃までは、CSRやBCPに目が向けられた結果、社会性が注目されるようになりました。それ以降(2021年頃まで)は、企業のグローバル化、世界的自然災害の多発など、地球規模の課題が増えてきました。また、ひとびとのメンタルヘルスが社会的に問題視されるようになるなど、環境保全性・心理配慮性が注目されています。
2000年頃まではとにかく急いで結果を出すことが求められ、企業はステークホルダーである株主の目ばかりを気にして、短期的な成果をコミットする、利己的なモノの見方をしていました。その後、優秀な経営者を迎えるために経営トップに高額な報酬を準備するようになりましたが、徐々にステークホルダーには顧客や従業員も含まれるという考え方が出てきました。そして地球規模の課題に向き合うことになったいま、長期的な視点で利他的に考える姿勢が求められており、地域のレジリエンスや社会的包摂性といった視点が必要になっています。
その1つがSDGs(持続可能な開発目標)だと言えます。当部会では、SDGsの17の目標と169のターゲット全てに目を通してFM品質との関連がどの程度あるか眺めてみました。ひとつひとつ見ていく中で、「持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」「強靱なインフラ構築」「持続可能な都市及び人間居住を実現」など、FMの品質と関係が深いキーワードが各所に含まれていることに気付かされました。
SDGsから見えてきた、これから必要とされるファシリティ品質について考察し、これからこの社会で重要視していきたいファシリティ品質のキーワードをまとめました。特にグローバル化による多様性への要求や自然環境への配慮、社会性の重視に関連するキーワードが全体的に目立っています。また、一人一人の生き方を尊重する心理配慮性が、「ひととして求めることが叶(かな)う」「秩序よりもゆとり」といったように多角的に捉えられています。今後部会では、具体的な事例をもとに、これらのキーワードを深掘りし検証する予定です。
※以上、JFMA機関紙「JFMA JOURNAL(ジャフマジャーナル) 2022 SPRING NO.206 (ファシリティマネジメントフォーラム2022 特集号)」より抜粋
部会員は、一般企業のみならず、学校、自治体庁舎、美術館などの多種多様なファシリティマネジャーが20余人参加しています。貴方も参加してみませんか。
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