矢野経済研究所は、賃貸住宅関連会社などを対象に、専門研究員による直接面談(オンライン含む)と文献調査を2021年11月〜2022年1月に行い、その結果をレポートにまとめた。レポートによれば、2021年度の国内賃貸住宅市場規模は新設着工戸数ベースで、前年度比108.9%の33万戸と予測した。
矢野経済研究所は、賃貸住宅関連会社などを対象に、専門研究員による直接面談(オンライン含む)と文献調査※1を2021年11月〜2022年1月に行い、賃貸住宅新設着工動向、参入企業動向、将来展望を調べ、その結果をレポートにまとめ、2022年2月22日に発表した。
※1 文献調査:2020年度までの貸家新設着工戸数は国土交通省の「建築着工統計」より引用、2021年度は矢野経済研究所予測値。貸家(賃貸住宅)とは、主に居住用の賃貸アパートや賃貸マンション、賃貸戸建住宅を対象としている。
調査結果によれば、2021年度の国内賃貸住宅市場規模は新設着工戸数ベースで、前年度比108.9%の33万戸と予測した。
具体的には、2017年度以降、貸家新設着工戸は減少トレンドが継続している中、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく落ち込んだ。しかし、これまで通り資産活用を目的とする需要層の賃貸住宅に対するニーズは底堅く、主要な賃貸住宅会社をはじめとして需要層への最適な資産活用の提案が継続して行われていることで、2021年度の貸家新設着工戸数は持ち直すと見込んでいる。
また、環境問題への取り組みが世界的に進む中、環境への負荷軽減に貢献するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様を採用した賃貸住宅の供給割合は将来的に増加していき、このような付加価値の高い賃貸物件の競争力は高まっていくと想定されている。
さらに、同じ賃貸住宅でも、環境への負荷軽減などの目的や明確なビジョンを持つ賃貸住宅と、ただ建てるだけの賃貸住宅とでは、長期間に渡る賃貸住宅経営の中で将来的な入居率に大きな差異が生じることになる可能性も高い。
今後は、在宅ワークが定着し、都心部から郊外へ住み替える層も一定数顕在化する一方で、都心部に立地する賃貸住宅の入居率が低迷する可能性は低い。都市部や中心部に位置する賃貸住宅の人気は高く、依然として高い入居率が見込める状況は継続しており、都市型戦略を進める賃貸住宅会社のシェア拡大が期待される。
加えて、郊外でも高級路線の賃貸物件開発を積極化することで、アッパー層の入居者を開拓するような動きが加速する見通しだ。郊外の賃料価格帯も上昇に転じるエリアが出てきており、コロナ禍での新しい生活様式の定着とともに、賃貸住宅の住まい方にも転換期が訪れている。
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