丸の内熱供給と新菱冷熱工業は、冷凍機システムの冷却水温度と冷却水流量を最適値に調整する「AI制御システム」を構築した。今後は、冷水圧力・冷水温度の制御範囲を広げ、AIによる運転台数の最適化に活用範囲を拡大し、大規模熱源を対象としたAI制御システムの性能を向上する。
丸の内熱供給と新菱冷熱工業は、大規模熱源システム向けのAI制御システムを共同で開発した後、使用し「冷凍機システムのエネルギー消費量が最小になる最適運転の自動化」に成功したことを2022年3月2日に発表した。
丸の内熱供給が所有する地域冷暖房施設(以下、DHCプラント)と大型施設の大規模熱源システムでは、運用するために複数可変速機器(インバータ制御)の組み合わせなどが必要で、制御設備の点数が増えている他、各機器を組み合わせた最適値のデータがないため、機器メーカー提示の機器特性などを参照し、監視員が運用実績データを基に設定値をチューニングしているケースが多くある。
さらに、各機器の発停順序、発停時刻、運転する機器に対する各種設定値(各機器の冷水流量、冷水送水温度、送水圧力、冷却水温度、冷却水流量といった要素)を組み合せて最適に制御することは、熟練監視員の知見を駆使しても難しい。
そこで、丸の内熱供給と新菱冷熱工業はAI制御システムを開発した。AI制御システムは、DHCプラントの「運用実績データ」や長年にわたり培ってきた熱源の「運転操作ノウハウ」、新菱冷熱工業が設計を担ったAIの予測と探索の機能で構成される。予測機能は、施設の機器特性を学習する予測モデルを利用し、設備の経年劣化などをDHCプラントの運用に反映する。
予測モデルの構築にあたっては従来の自動制御システムによる運用実績を利用している。予測モデルは、AIで各種最適値を算出し、熱源システムにフィードバックすることで、システム全体の安定性を確保し、エネルギーの消費量を減らせる。
AI探索機能は、稼働中の熱源システムに対し、継続的にエネルギー消費量が最小となる設定値(以下、最適値)を探索し、出力の調整と制御を行う。両機能を活用することで、気象条件や負荷変動により刻々と変わる最適値を求め、作業者の判断では困難だった最適な設定を実現し、DHCプラントと熱源システムにおけるエネルギー消費量の低減を図れる。
AI制御システムの基幹ソフトには、SOINNのAIアプリケーションを活用し、三菱地所設計がアドバイザーとして参画し、プラント設計者の観点を伝えている。
両社は、東京都千代田区の複合施設「大手町アーバンネットセンター」と「丸の内二重橋ビルプラント」に導入し、実運用における最適値の自動設定や継続的な安定運転とエネルギー効率の向上効果を確認した。また、両施設の年間エネルギー消費量は、運用実績データと運転操作ノウハウを活用した従来の自動制御運転と比べて、約4%の削減を達成した。
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