富士経済は国内の空調・熱源関連ビジネス市場の動向を分析した結果を「2020年版 空調・熱源システム市場の構造実態と将来展望」にまとめた。2020年版 空調・熱源システム市場の構造実態と将来展望では、空調・熱源関連の市場規模を2.6兆円と予測した。
富士経済は、国内の空調・熱源関連ビジネス市場の動向をリサーチし、結果を「2020年版 空調・熱源システム市場の構造実態と将来展望」にまとめ、2020年4月15日に発表した。
同調査では、空調・熱源関連ビジネス市場におけるフロー型とストック型の現状を分析した他、産業施設やオフィスビル、商業施設などの需要もリサーチし、空調系サブコンや電気系サブコン、メンテナンス会社、エネルギーサービス会社など業態別の動向も調べた。
空調・熱源関連ビジネスのフロー型ビジネスは空調システムの設計と施工を扱う事業で、ストック型ビジネスは空調システム完工後の保守メンテナンスや遠隔モニタリング、節電アグリケーション、空調リース、空調・熱源関連のXaas(X as a Service)を行う事業を指す。
なお、調査期間は2019年8〜11月で、リサーチでは、市場への参入企業、関連企業、団体などへの富士経済の専門調査員によるヒアリングや関連文献と社内データベースを用いた。
フロー型ビジネスの空調施工エンジニアリング市場は近年、東京五輪関連の需要により拡大し、2018年度は前年度比8.1%増の1兆8700億円となった。業態別にみると空調系サブコンがシェア8割以上を占め、次いで電気系サブコンやメンテナンス会社の順となった。施設別の需要では、1案件あたりの設備投資額が大きい産業施設の市場構成比が最も高く、次点がオフィスビルで、次が業務施設だった。
今後は首都圏を中心とした再開発需要や東京五輪により後回しになっていた案件、新冷媒への切り替え、バブル期に建築された建物の設備更新などによる改修需要の増加を受けて、微減ながらも底堅い需要が予想される。
空調施工エンジニアリングの一部で、各種設備に計器を装備して中央監視システムを構築する空調計装エンジニアリング市場は昨今、計画的な改修を実施する傾向のある大型案件のリニューアルニーズを主に取り込んでいる。また、設備の管理点数の増加もあって単価上昇も期待される。空調施工エンジニアリング市場が縮小していく状況においても、横ばいを維持すると予想される。
ストック型ビジネス市場は、人材不足を背景としたアウトソーシングニーズの高まりにより拡大しており、空調・熱源関連ビジネス市場における構成比も上昇していくと予測される。ストック型ビジネスの内訳を見ると、空調保守メンテナンス市場は対象となるオフィスビルや商業施設が首都圏を中心に増えていることからわずかながら拡大している。
2018年度の市場は、前年度比0.7%増の4522億円となった。業態別にみると、空調設備や給排水設備などの設備管理や清掃、警備などを行うメンテナンス会社のシェアが高くなっている。次いでシェアが高い空調系サブコンは、自社で施工した案件の改修工事を受注するために顧客接点強化の一環として空調保守メンテナンス業務を展開している。
ベンダー別にみると、メンテナンス会社の日本空調サービスやエレベーター保守会社の三菱電機ビルテクノサービス、空調系サブコンの高砂熱学工業、計装会社のアズビルなどが上位を占めるなど、業態が多様化している。
需要分野では産業施設の市場構成比が最も高い。続いて高いのは業務施設で、次にオフィスビルが位置する。メンテナンス会社は各分野をターゲットにしているものの、空調系サブコンは産業施設で、計装会社やエレベーター保守会社はオフィスビル中心の展開が特徴で、今後も市場は微増ながらも安定した推移が続くと見られる。
オンサイトエネルギーサービス市場のリサーチでは、エネルギーサービス会社が顧客敷地内にエネルギー設備などを設置し、電気やガスなどのエネルギーを供給するサービスを対象とした。また、パフォーマンス保証を約束するESCO契約も含んでいる。オンサイトエネルギーサービスは、初期費用がないストック型ビジネスであり、市場は契約件数の増加とともに拡大している。2018年度の市場は1360億円となった。
業態別にみると、エネルギーサービス会社がシェア9割を占めている。エネルギーサービス会社は、ガス会社系列や電力会社系列であり、関電エネルギーソリューションや東京ガスエンジニアリングソリューションズ、日本ファシリティ・ソリューション、シーエナジーなどが展開している。
計装会社ではESCO(Energy Service Company)のパイオニアであるアズビルが扱っている。最近では需要の波が大きい建築ビジネスのストック型化を進めようと、一部の空調系サブコンや電気系サブコンもESCO方式の提案を行っている。
需要分野の特徴は、かつて燃料費が高かった時代に導入した、1案件あたりの規模が大きい産業施設の市場構成比が高い。外部委託ニーズのある建物稼働率の高い業務施設や商業施設は、近年の有力需要先となっており、建物稼働率の低いオフィスビルの市場構成比は低くなっている。
2000年頃から始まったオンサイトエネルギーサービスでは、一般的な契約期間は約15年とされ、更新時期を迎えた契約の多くは更新しているが、一部では解約も散見される。一定数の解約を勘案すると今後の市場拡大のペースは、やや鈍化していく見通しだ。
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