NEDOは、鹿島建設とゼネラルヒートポンプ工業ともに、「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」の事業で、愛知県大府市の豊田自動織機大府工場に「天空熱源ヒートポンプ(SSHP)システムを設置し、実証試験を進めている。今回の実証試験では、鹿島建設とゼネラルヒートポンプ工業が、日建設計総合研究所と東海国立大学機構 名古屋大学と共同で、SSHPシステム運転データの収集・解析に取り組む。さらに、システムの実証運転を通して、試験で活用するSSHPと給湯用ヒートポンプチラーの効率とシステム全体の性能評価を行い、機器容量の最適化でイニシャルコストの低減を実現し、運転制御の高効率化でランニングコストの低減を達成して、実用化に向けた技術の確立を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、鹿島建設とゼネラルヒートポンプ工業とともに、「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」の事業で、愛知県大府市の豊田自動織機大府工場に「天空熱源ヒートポンプ(SSHP)システム※1」を設置し、実証試験を開始したことを2021年12月16日に発表した。
※1 天空熱源ヒートポンプ(SSHP)システム:SSHPはSky Source Heat Pumpの略称で、天空熱源ヒートポンプのことを指す。天空熱源ヒートポンプとは多様な再エネ熱を熱源水ループで連結する水熱源ヒートポンプ
現状、脱炭素技術で重要な再生可能エネルギーは、太陽光発電や風力発電による電気の利用が主流となっている。一方、地中熱や太陽熱といった再生可能エネルギーの熱利用※2は大きな賦存量※3にもかかわらず、設備導入にかかるコストが多大なため、普及が進んでいない。
※2 再生可能エネルギーの熱利用:冷暖房や給湯に利用する熱を得るために地中熱、太陽熱、雪氷熱などの再生可能エネルギーを用いること
※3 賦存量:理論で対象のエネルギーが潜在する量を算出したもの
そこで、NEDOは2019年度に、再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発をスタートし、今回の実証試験に至った。
実証試験では、鹿島建設とゼネラルヒートポンプ工業とともに、豊田自動織機の大府工場内にある厚生棟の食堂に、地中熱や太陽熱など、多様な再生可能エネルギーを集放熱源※4とするSSHPシステムを設置して、冷暖房や給湯といった多目的な熱需要に対応する他、低コストで高効率な要素機器とSSHPシステムの性能も検証する。
※4 集放熱源:集熱源と放熱源を指す。SSHPシステムでは、暖房時に、太陽、空気中、地中から熱を集め空調用熱源として用いる。冷房時は、冷房排熱で暖まった熱源水ループの熱を空気中と地中に放熱する
使用するSSHPシステムは、日射量や外気条件によってはコンプレッサーを運転せずに直接熱源水を加熱するなど、再エネ熱を最大限活用するための多様な運転モードを搭載しており、外気条件により最も高効率で経済的な運転を自動で選択する高機能なヒートポンプ。なお、SSHPシステムの実証設備は2021年8月16日に完成した。
具体的には、大府工場内の厚生棟では、これまで使用されてきたガスヒートポンプエアコン(ペリメータ※5系統用)を撤去し、太陽熱と空気熱を熱源とするSSHPや地中熱を活用した「給湯用ヒートポンプチラー※6」、汎用の地中熱と水熱源のヒートポンプなどから成るSSHPシステムを新設した。これにより、低コストで高効率な再生可能エネルギー熱の利用に取り組み、実証試験では実証施設で生じる空調負荷の約30%に対応する見込みだ。
※5 ペリメータ:窓際など建物の外周部。日射、外気温度などの外乱外気の影響を受けやすく、空調の負荷が大きくなる
※6 ヒートポンプチラー:ヒートポンプを用いたチラーのこと。チラーとは水や各種液体の液温を一定に管理しながら循環させる装置
さらに、上流(設計段階)から下流(運用段階)までをカバーするコンソーシアム体制を構築し、導入コスト低減に向けた各要素の技術開発と緊密に連携することで、2023年度までにトータルコスト※7の20%カットと投資回収年数※814年以下を実現し、2030年までにトータルコストの30%削減と投資回収年数8年以下の達成を目指す。
※7 トータルコスト:システム導入のためのイニシャルコストと保守費用を含むランニングコストで構成される費用
※8 投資回収年数:汎用的なヒートポンプのトータルコストを基準とし、比較するヒートポンプとのトータルコストが一致する運用年数を指す。短い年数で一致することは低コストであるという判断指標
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