矢野経済研究所は、国内の主要な空調衛生設備工事会71社に法人アンケート調査を行い、2016〜2020年度における空調衛生設備工事売上高を集計し、コロナ禍の工事売上動向をレポートにまとめた。レポートによれば、2020年度の空調衛生設備工事売上高は2019年度比86.9%の1兆2197億円と、前年度比で13.1%の下落を記録した。
矢野経済研究所は、国内の主要な空調衛生設備工事会社92社を対象に、空調衛生設備工事に関する法人アンケート調査※1を2021年8〜10月に行い、うち71社からの回答を基に、2016〜2020年度における空調衛生設備工事の売上高推移をレポートにまとめ、2021年12月27日に公表した。
※1 法人アンケート調査:設備(電気、空調、衛生など)工事のうち、主に空調設備工事と衛生設備工事を請け負う事業者92社を対象に実施。調査では、工事売上高や受注動向や資材仕入、事業の注力ポイントなどをリサーチし、空調衛生設備工事業の動向を把握した。さらに、2016〜2020年度における空調衛生設備工事売上高の回答があった71社の工事売上高を集計し、コロナ禍における工事売上動向をレポートにまとめた。なお、回答企業の空調衛生設備工事売上高には、空気調和設備工事、給排水衛生設備工事、環境衛生設備工事、消火設備工事、特殊管設備工事が含まれる
調査結果によれば、2020年度の空調衛生設備工事売上高(回答が得られた71社の設備工事売上高合計)は2019年度比86.9%の1兆2197億円となった。
具体的には、国内の空調衛生設備工事は受注環境が堅調に推移するも、新型コロナウイルス感染症の拡大で、大型再開発案件や小規模リニューアル案件が先送りされるケースが増え、市場規模は前年度比で減少となった。
とくに、宿泊施設を含むインバウンド(訪日外国人客)関連施設の案件や一般消費者が頻繁に出入りする飲食店、小売店などからの受注はコロナ禍の影響を受け減少した。さらに、繰り返される緊急事態宣言に伴う店舗営業の自粛による施工延期も2021年度の受注環境を悪化させた。
また、コロナ禍で空調衛生設備工事会社の人手不足問題は一時的に緩和しているものの、高齢化・人口減少などを背景に根本的な解決には至っておらず、労務費は高止まり状態となっている。加えて、各企業は、人手不足を大きな課題とし、人材育成の強化を図っているが、資材費の高騰が収益を圧迫している状況だ。今後は、収益性を確保するため、業務工程の省人化と省力化を進めていく必要があるとみられている。
調査時期:2021年8〜10月
調査対象:国内の主要な空調衛生設備工事会社92社
調査手法:郵送などによるアンケート調査と矢野経済研究所の専門研究員による直接面接調査併用
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