CADで設計し、施主や協力業者とも日常的にPDF図面をやりとりしている設計者にすれば、電子申請に特段の新しさを感じることはないかもしれない。
しかし、振り返れば法律上で確認申請電子化が可能となったのは2014年のこと。佐々木氏によれば、その時点で実際に電子申請が行われたケースはほとんどなかった。当時はセキュリティ面の課題が多く、法律上は可能でも、セキュリティリスクの不安があったため、誰も手を付けなかった。
しかし、2017年に電子証明書要件が緩和されて、受け入れ側のシステムなどの開発が加速。さらに2020年に押印廃止が決まり、継いで2021年に電子署名も不要となって一気に進み始めた。
2020年にまず押印廃止が決まったときは、確認申請書や図面類に電子署名が必要とされ、さらに建築主から紙の委任状に判をもらって指定機関に送る必要もあった。それが2021年の改正で、電子署名も不要となり、併せて委任状もスキャンデータで提出できるようになり、一気に電子申請しやすくなった。佐々木氏自身も大学生時代に設計事務所でアルバイトをしており、大量の確認申請用図面を製本し、ハンコを捺して、ようやく提出する作業を延々と行った経験があったという。今では、それらの作業が全て不要になったわけで、往時に比べ設計者の申請作業はずいぶん簡単なものとなったのではないだろうか。
法律的には図面のPDF化すらも、必須ではなくなっている。例えばCADデータやBIMデータで確認申請を行うことも、法律的には可能となっているのだ。
しかし、実際にはCADやBIMソフトを購入して、実運用する指定確認検査機関はまだ少なく、現状ではPDFなどで提出するやり方が実情。だが、法的にはOKになっているのだから、後は現実としてどうやって受け入れ可能な「環境を作っていくか」に掛かっている。「そのための議論も進められている」と佐々木氏は話す。確認申請は「データを送ることで受理される」という流れができつつあり、後は環境整備の問題なのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.