東急建設は、室内空気を廃棄せずに循環させることでランニングコストを従来品と比べて50%削減するクリーンルーム「TQ-MaPS」を開発した。TQ-MaPSは、これまで一般的だった壁吸込みタイプのクリーンルームでは実現が難しかった、「ISO基準 浮遊微粒子濃度」の「クラス6」を達成している。
東急建設は、政府が2021年6月に食品衛生法で義務付けた「HACCP※1」による食品衛生管理意識の高まりを受け、顧客が求める性能とコストのバランスが取れたクリーンルーム「TQ-MaPS(Tokyu Making Purified System)」を提供開始したことを2021年10月29日に発表した。
※1 HACCP:食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去あるいは低減させるためにとくに重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法
HACCPの義務化により、全ての食品製造事業者は、HACCPに基づいた衛生管理が求められている。これに伴い、製造空間の清浄度や温湿度、室圧を維持することが重要となっている。
そこで、東急建設では2020年12月に、クリーンルームの低コスト化実証実験施設を新設した。通常、クリーンルーム内で発生する粉塵(ふんじん)量は、着衣や動作、製造状況といった実際の作業工程によって異なるが、新設した実証実験施設では、多様な条件にあわせてクリーンルーム内で発生する粉塵や発熱を再現可能なため、最適な風量の設定や処理能力の検証が行える。
さらに、クリーンルーム内の循環空気の吸込位置やバランスを変えられるため、現存する実証実験施設では困難だった、壁や床などさまざまな空気循環経路の再現にも応じる。こういった利点により、顧客の使用状況に近い空間を再現でき、高精度な予測と検証が行える。
今回提供を開始するTQ-MaPSは、クリーンルームの低コスト化実証実験施設での実証実験に基づき、新たな技術を導入して開発した高品質・低コストのクリーンルーム。具体的には、排水口を兼ねた床吸込口の採用で、清浄度の低い空気をより効率的にクリーンルーム外に排出するため、室内の空気清浄度を今まで以上に高められる。
上記の特徴により、浮遊微粒子濃度を40%減らせ、これまで一般的だった壁吸込みタイプのクリーンルームでは実現が難しかった、「ISO基準 浮遊微粒子濃度」で「クラス6」を達成し、顧客はさらに清潔で、安全なクリーンルームの設置が可能となった。
コスト面では、床吸込口の採用により、清浄度の維持向上と施工費でイニシャルコストをカットし、室内空気を廃棄せずに循環させることでランニングコストを従来品と比べて50%削減した。加えて、排水機能を持たせることで排気と排水を分離する他、圧力制御機能により適切な室圧制御が行える。
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