このうち接触感染は、日常の消毒をしている前提で、感染リスクが存在する場所を特定し、そのエリアを非接触へと切り替える。または、すぐ近くに消毒液の用意や施設の使用自体を停止するといった施策を検討する。非接触方式に置き換えられる設備は数多く、入退館システムや自動扉以外にも、エレベーターでのタッチレスキー、トイレの自動水洗などの導入が考えられる。
手で触らないための手段も既にさまざまなソリューションが市場にあり、ドアオープナーやスマホなどを活用したリモコンなどで、自動化が可能となる。竹中工務店では、音声・文字認識AI制御システム「ツイートREMO(リモ)」や机上のNFCタグにスマートフォンをかざして卓上の扇風機などを操作する「なんでもリモコン」といった自社オリジナルの非接触製品も展開している。
建物や什器類を消毒するときも、以前は人の手で消毒することが大半だったが、コロナ禍に伴い、自動で消毒してくれる据え置き製品のUV照射機器やロボットの需要も高まった。ただ、省人化が図れる一方で、確実な消毒が行われないといったようなリスクも散見されている。
2つ目の飛沫感染対策は、基本となるソーシャルディスタンスは行ったうえでのさらなる防御策という位置付けだ。
「大事なのは、施設を知ることにあり、混雑するエリアを確認し、施設全体の動線分離、またはエリアごとのパーテーション設置、注意喚起のサイン掲出といった取り組みが求められる。さらに、モニタリングとアラートの機能が付けられれば万全だろう」(杉内氏)。
イメージを膨らませてみると、工場などの外部(来訪者)からの感染を防止したい場合は、来訪者と従業員の動線が交わらないようにレイアウト変更するのも有効な手だて。トイレの利用状況を表した表示板など、たとえデジタルでなくても混雑状況を常時把握できれば、混み合ったトイレ内で無駄に待たずに済み、密が防げる。
現在は、IoT機器の普及により、人の行動を把握する方法は豊富に存在する。ビーコンやカメラなどを活用して人流を知る方法があるが、それぞれ得手不得手があるので、目的に応じて使い分けるのがベスト。フリーアドレス席での着席状況を確認したり、特定エリアの利用人数を見える化したりなど、詳細なデータが得られるので、感染対策だけじゃなく、今後のビジネス効率化にも使える可能性を秘めている。
最近では、広いエリアを対象に人の動きを把握し、ビジネスに活用するケースも増え始めている。一例として、専用のレーザーセンサーを用い、展示会場の人の動きを可視化した事例では、人の動線が目に見える形で分かるほか、混み合う場所、混みやすい時間帯も割り出せる。具体的な密の把握ができるだけでなく、対策の効果を即座に知ることや会場自体の利用効率を測ることにもつながる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.