浸水対策の基本的な考え方については、下図を例にとると、地上部の水防ラインを設定して、ラインとチェックリストに沿って、敷地で一周回って条件に準じているのかを確認する。また、地下部でも、地下外壁の貫通部や外構設備との干渉など、水が逆流しないかをチェックすることも必要となる。
いくつかの実例を交えた杉内氏の解説で、最初に採り上げたのは、施設の「嵩(かさ)上げ」。基礎のかさ上げは、新築時でなければ通常は難しいが、杭頭を地上レベルに伸ばし、盛土を減らすといった方法がある。別の手法では、複数の建物を敷地全体でまとめて防水壁で囲い、重要設備のみをかさ上げするケースもある。
地震の多い地域では、防水板で多重の防御を施すことが多い。その場合は、重要設備が地下に入るため、外側と内側の両方に板を施している。さらに、多少水が入ってしまった際も想定して、水密扉も用意している。
以上が、浸水対策を想定した具体的な対策となるが、その他に、単に防災だけでなく、環境、地域振興の面からも地域に貢献できる“グリーンインフラ”を取り込むことも一つの手段。「主に建物のグリーンインフラといえば、壁面緑化技術が挙げられる。防水壁だと圧迫感があり、地域住民に妙な威圧感を与えてしまうが、緑化した壁面であれば、見栄えも柔らかい印象となる。また、外構や植栽を建物敷地内に整えて、水害の被害を抑えることも考えられる。水害対策だけでなく、地域の緑を増やすことにもつながり、一石二鳥とも言えるのではないだろうか」(杉内氏)。
感染症対策ですぐに思い付くのは、テレワークや徹底した消毒など、施設の運用面で行われる対策が多い。杉内氏は、一般的な建物でもできる具体的な感染症対策について考察した。
まず、施設内でパンデミックが起きないためにはどうすれば良いのかを一度整理すると、一番重要なのは「外部で感染させない」ことだ。仮に感染しても、ウイルスを施設に持ち込ませない、持ち込まれても施設内での感染防止に努めることやすぐに感染者を発見し、拡大防止すること、その後の対応をどうするかなどが求められる。項目ごとに、社員、管理者、施設がそれぞれでどんな対策ができるのかを具体的に考えていく必要がある。なかでも、施設側で実施できる対策としては、「入場チェック」「消毒」「閉鎖」などが挙げられる。
一方、対策にどれだけの実用性があるかを精査する姿勢も大切となる。一般的に有効だと認識されている、消毒や殺菌作用のある設備の使用などは多くの企業が実施しているものの、実際に効果があるのかの明確な医学的根拠があるわけではない。製品ごとに研究が進んでいる最中であり、鵜呑(うの)みにするのは早計だ。
では、どうすれば良いのか。杉内氏は、建物内で起こる感染経路として、「接触」「飛沫」「空気」の3種類で、それぞれの対策を説明した。
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