技研製作所の「インプラント工法」と「GRBシステム」が、狭隘地でも工事可能な省スペース施工と仮設レス施工のメリットが評価され、独・鉄道の盛土補強工事に採用された。今回受注した案件を追い風に、ドイツ市場をはじめ、欧州での採用拡大に拍車が掛かることが期待されている。
技研製作所が製造販売する杭圧入引抜機「サイレントパイラー」による「インプラント工法」と「GRBシステム」が、ドイツ・ベルリンで鉄道の盛土補強工事に採用され、工事を完了したと2021年9月21日に発表した。
インプラント工法は、圧入機で既成杭(鋼矢板や鋼管杭)を地中に押し込み、地球と一体化した粘り強い構造物を構築する工法。GRBシステムは圧入機とパワーユニット移動装置、クレーン、杭搬送装置がインプラント工法で施工した杭上を自走し、その上で作業を完結させるシステムのこと。
プロジェクトの現場は、住宅街と鉄道が近接する狭隘(きょうあい)な立地だったが、全ての作業を既に施工した杭上で完結させるGRBシステムにより、クレーンや資機材置き場などの仮設構台が不要となり、住民生活や列車運行に影響を与えることなく完工した。施工は、グループ企業のオランダGikenEuropeが、技術コンサルティングを担当した。
狭隘地の施工では、大型機械を用いる従来工法では、住宅を撤去して作業ヤードを広げるか、列車運行を止めて線路上に仮設構台を設置しなければならなかった。同時に住民生活の妨げとなる工事中の振動や騒音、機械の転倒リスクも懸念材料だった。
しかし、コンパクトな機械幅さえ確保できれば施工できるGRBシステムは、省スペース施工と仮設レス施工で、狭い場所での施工にも対応し、無振動かつ無騒音のため、生活環境にも影響を与えない。加えて、全ての機械装置は既設杭をしっかりとつかんでいるため、原理上は転倒の危険性も無い。今回の選定では、こうした施工空間の制約条件や周辺環境への悪影響を克服できる利点が評価され、採用に至った。
また、現場では、既存の鉄道盛土にクラックが入るなど経年劣化が進行。将来は、現在よりもハイスピードの列車を運行させる計画もあったため、これに耐える盛土補強が求められた。
工事は、サイレントパイラーの「F401-1400」で、長さ7.25〜10.25メートルのU形鋼矢板を2枚同時に圧入して、合計186ペア(372枚)を施工。224メートルの区間にわたって、盛土の安定性を高め、側面の土が崩れるのを防ぐ擁壁を構築した。圧入工の工期は2021年5月25日〜7月7日。
既にドイツでは鉄道の盛土補強工事のほかにも、2013年に発生した大洪水以降、洪水対策事業でも圧入技術の導入が広がっており、ブランデンブルク州やザクセン=アンハルト州で工事実績があるという。現在は、数多くの犠牲者を出した今夏の洪水被害を受け、大規模な水害対策プログラムが予定されているため、技研製作所ではインプラント工法での受注を見込んでいる。
GRBシステムについては、発注者やコンサルタント、元請業者らが、別の鉄道盛土補強工事で検討を始めているだけでなく、他案件での採用も視野に入れている。
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