全米で“最も汚染された運河”に、技研製作所の圧入工法が採用導入事例

技研製作所が製造販売している杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を用いたインプラント工法が、米ニューヨーク市で進められているゴワヌス運河の護岸改修工事に採用された。

» 2020年09月28日 06時00分 公開
[BUILT]

 技研製作所は2020年9月25日、同社独自の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を使用したインプラント工法が、米ニューヨーク市ブルックリンの護岸改修工事に導入されたことを明らかにした。工事名は、「Fulton Municipal Works Former MGP Site(フルトン ミュニシパル ワークス フォーマー MGP サイト/MGP:Manufactured Gas Plant)」で、公開会社のNational Grid(ナショナル・グリッド)が発注し、施工はPosillico(ポシリコ)が担当。

注目度の高いゴワヌス運河で採用、圧入技術の認知向上へ

「Fulton Municipal Works Former MGP Site」に適用されたインプラント工法 出典:技研製作所

 ゴワヌス運河は、「全米で最も汚染された運河の一つ」とされており、護岸の老朽化も深刻化している。運河自体は、100年以上前に築造されたもので、現在に至るまで補修されていない護岸もあり、木杭の腐食やコンクリートのたわみによる崩落や破損が近年相次いでいる。また運河沿いは、工場が立ち並ぶ工業地区となっており、工場の汚染水が流入することもあり、水質汚染が懸念されてもいる。現地では多くの建設コンサルタントが河川再生事業の一環で、土壌や水質、護岸の健全度を調査しており、建設関係者や地元住民の関心を集めている。

 インプラント工法のプロジェクトは、技研製作所グループのGiken America(技研アメリカ)がエンジニアリング企業として、設計会社、元請業者に提案し、採用に至った。技研製作所では、注目度の高い運河でインプラント工法の優位性をアピールすることにより、圧入技術の認知度向上と採用拡大が進むことを期待している。

 インプラント工法自体は、260メートル区間に適用。既存護岸の前面に、サイレントパイラー「F401-1400」による単独圧入で、Z形鋼矢板(長さ15.7〜20.9メートル)を380枚圧入し、新しい遮水壁護岸を構築。遮水壁護岸には、工場側から河川への汚染水の流入を防ぎ、水質汚染を食い止める効果もある。

「Fulton Municipal Works Former MGP Site」でのサイレントパイラーによるインプラント工法 出典:技研製作所

 今回の採用に先立つこと2018年に、工事が周辺環境に及ぼす影響を調査するため、別工区で試験施工を行い、打撃・振動式の杭打ち機による工法とインプラント工法を比較した。結果、インプラント工法は無振動かつ無騒音に加え、地盤や周辺構造物への影響を最小限に抑えられる優位性や施工精度の高さも認められたことが導入の決め手となった。

 ゴワヌス運河の護岸改修工事では今後、2.9キロに及ぶ別の改修区間でもインプラント工法の採用が予定されている。また、現在は改修対象となっていない護岸でも、改修事業が検討されているため、さらなるインプラント工法の普及につながることが見込まれる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.