技研ヨーロッパが蘭・工場新設、EU圏で「圧入」市場拡大を狙う市場動向

技研製作所グループでオランダに拠点を置く、Giken Europeの新工場と事務所棟が竣工した。新工場ではEU圏での圧入市場の拠点となると位置付けられている他、大型圧入機の実習も含めた研究機能も備えるため、日本で培った圧入技術のノウハウを欧州にも普及させるとともに、圧入事業の市場拡大をも狙う。

» 2020年08月21日 06時00分 公開
[BUILT]

 技研製作所のグループ企業Giken Europe(技研ヨーロッパ)が、900万ユーロを投じオランダアルメーレ市の本社敷地内で建設を進めてきた新工場と事務所棟が完成し、2020年7月30日に稼働を開始した。

EU圏への圧入機の部品供給を一元管理

技研ヨーロッパの新工場と事務所棟 出典:技研製作所

 技研ヨーロッパはグループ初の海外現地法人。欧州での圧入市場※1の拠点として1991年に本社事務所と工場を構えて事業をスタート。

※1 圧入市場:杭をつかみ静的に地中に押し込む工法を「圧入」と呼ぶ。技研製作所は1975年、杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を開発し、建設公害の元凶と言われた杭打ち工事による振動や騒音問題を一掃。その後も開発型企業として、自ら生み出した圧入業界をけん引してきた

 2019年にはイギリスロンドン事務所を同社に集約し、今回の拠点増強は、グローバルエンジニアリング企業としての事業拡大を見据えたもので、大型機の整備に対応できる工場と研修施設を備えた事務所棟を敷地内に新築した。

 新工場の延べ床面積は2811平方メートルで、隣接する既存工場の1522平方メートルと比べると、1.8倍の規模となる。建設虎児は2019年10月に着工し、2020年7月に完成した。

 工場内には、欧州で主力化する回転切削圧入機「ジャイロパイラー」などを整備と保管できるように、揚程10メートルで定格荷重最大30トンを含むクレーンを3基配備した。

新工場内部 出典:技研製作所

 また、EU圏への部品供給を一元管理する目的で、イギリスとドイツの代理店に配備していたレンタル用機材や部品をここに集約。これにより、スペアパーツなどの適正在庫の管理が容易になり、部品の供給スピードを早めることが可能になる。併設している実機のショールームスペースでは、ユーザーや業界関係者へのPRの場として活用する。

 2階建ての事務所棟には、セミナールームを設置し、現地技術者の育成や社員教育のための機械操作やメンテナンス技術、工法普及、営業プレゼンをテーマにした講習会を開催。同時に、新工場でも実機を用いて、機械操作や故障の原因調査、メンテナンスなどの実技を訓練する計画があり、日本で培われたノウハウを知識と技術の両面から欧州にも伝えていくとしている。これまで無かった研修機能をフル活用して、欧州における圧入のトレーニングと情報発信の拠点となることを目指す。

セミナールーム 出典:技研製作所

 グループはアルメーレ本社を中核拠点に位置付け、ドイツベルリン事務所との2拠点で、長期ビジョン「海外売上比率を全体の7割とする」の実現に向け、欧州圧入ビジネスの事業拡大を加速させていく。

 従業員に関しても再編を行い、工場新設に先立ち2019年2月にロンドン事務所の人員をアルメーレ本社に組み入れた。今後は、駐在員の増員や現地エンジニアの採用で、運営体制の強化とローカル化を図っていく。

 技研製作所では、新工場完成に寄せて、「気候変動対策としての防災、減災工事や環境に配慮した持続可能なインフラ整備は欧州でも強く求められており、これらのニーズに応える当グループのインプラント工法は多くの潜在需要があると確信している。2020年5月にオランダアムステルダム市と結んだ世界遺産“アムステルダムの運河”の護岸改修に関する技術開発の連携協定は、ニーズをつかんだ好例の一つ。同国政府によるデルタプログラム※2に基づく、大型案件などへの提案も積極的に進めており、手応えを感じている」と話す。

※2 デルタプログラム:オランダでの持続可能な洪水リスク管理などを目的とするプログラム。2032年までに堤防補強工事などに、年平均で約13億ユーロの投資が予定されている

配置図 出典:技研製作所

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