鹿島建設は、工場製作部材の製作や施工の進捗状況をBIMと連携してデジタル管理するシステムを開発し、都内の大型建築現場で実証を行った。
鹿島建設は2021年8月19日、工場で製作する各種部材に関する製作・運搬・施工の各フェーズでの進捗予定と実績をBIMモデルと連携して管理する進捗管理システム「BIMLOGI(ビムロジ)」を開発したと発表した。システム活用により、日々刻々と変化する工事の進捗状況をリアルタイムに把握して関係者間で共有することができるようになるため、工事の手戻りや手待ちの発生を減らせる。
これまで建物を構成する各種部材の製作や施工状況に関する進捗管理は、担当者が工場へその都度状況を確認し、現場を巡回することで収集した情報を紙の図面にメモやマーキングして対応してきた。そのため、関係者間で最新の進捗情報を円滑かつタイムリーに共有することが難しく、連絡不備などによる工事の手戻りや手待ちが発生することが課題となっていた。
鹿島建設が推進している生産性向上に向けた将来ビジョン「鹿島スマート生産」のなかで、“全てのプロセスをデジタルに”をコアコンセプトの1つに位置付け、BIMを基軸とした全ての建設生産プロセスのデジタル化を進めている。その一環として開発したBIMLOGIは、部材ごとに付与された固有のIDとBIMを紐(ひも)付けることで、部材ごとの製作から、出荷・運搬、現場での受け入れ、施工、検査までの予定と実績を管理。情報の登録には、部材ごとのID情報を持ったQRコードを利用する。製作時に工場で貼り付けたQRコードを管理フェーズのたびにスマートフォンで読み取ることで、自動的に部材ごとの進捗状況がクラウド上のシステムに登録される。対象部材は、鉄骨、外装材、内装材、建具、衛生・空調・電気設備機器など。
クラウドに登録されたデータは、Webブラウザを用いてリアルタイムにビジュアルで確認でき、進捗情報を関係者間で円滑に共有。これにより、作業の手戻り・手待ちを削減できるほか、システムに登録された実績情報を協力会社の出来高帳票として活用することで、協力会社からの出来高請求を正確に照合可能になり、事務処理作業の大幅な削減や適切な工事代金の支払いが実現する。
部材取付後の検査フェーズでは、部材別に検査項目を設定して、図面へのチェックや写真と合わせた検査の記録が可能。検査結果は自動登録されるため、検査未了箇所の抽出は容易に判別できる。
現場適用は、2020年4月から都内の大型建築現場に導入した。現場では、鉄骨工事で約3000、カーテンウォール工事で約2000、建具工事で約900、電気・空調・衛生設備工事で約6万点の部材を対象に、各部材の製作状況や施工の進捗状況を関係者間でリアルタイムに共有し、手戻りや手待ちがほぼ無くなるなど、より合理的な現場管理につながることが実証された。
今後、鹿島建設はシステムと既開発の各種現場管理ツールを連携し、現場のさまざまな施工データを収集のうえ分析することで、現場管理のさらなる合理化を目指す。
また、部材の製作や運搬時のCO2排出量が明らかになれば、システムの進捗データを積算することで、現場ごとにCO2排出量のタイムリーでの把握が見込める。建設事業のサプライチェーン全体でのCO2排出量の把握と削減が求められるなか、システムを活用したより効率的な運搬計画の立案など、CO2削減に向けた取り組みを推進し、「脱炭素社会移行への積極的な貢献」にもつなげていく。
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