新型コロナウイルス感染症の拡大により、建設業界でも事業環境が悪化し、いまだに脱出の糸口を見つけ出そうと模索する企業は少なくない。その一方、コロナ禍の副産物として、これまでなかなか浸透しなかったBIMや現場管理ツールなどといった業務効率化をもたらすDXが急速に普及しつつある。こうした国内の建築/建設業を取り巻く環境が様変わりするなかで、オートデスクと市場調査会社のIDC Japanは、コロナ禍で苦境に立たされた建設業が業績回復までに至る道筋を示したウェビナーを開催。IDC Japanの独自調査から浮かび上がってきたCOVID-19を克服するためのキーワードとオートデスクが提供するクラウドソリューションの有効性を説き、いかにしてネクストノーマルに備えるべきかを提言した。
オートデスクは2021年7月6日、建設業向け特別Webセミナー「業績回復への道:デジタル技術でCOVID-19の影響を克服するための建設業の取り組み―IDCレポートから読み解くアジア太平洋地域の現状」を開催した。
ウェビナーでは、IDC JapanでIT市場全体の動向の分析や市場予測を担当する敷田康氏を講師に招き、オートデスクと調査会社IDCが日本を含むアジア太平洋地域の建設業283社を対象に新型コロナウイルス感染症の影響と、その回復状況に関する調査結果を解説した他、オートデスク コンストラクションソリューションズセールスマネジャー 大西正明氏も業界が直面している課題や新たな可能性についてのプレゼンテーションを配信した。
IDC Japan ITスペンディングリサーチマネジャーの敷田氏は、建築/土木と他産業の比較分析を中心に国内企業のDX動向、日本を含むアジア太平洋地域での建設業界の新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた取り組み、最後にIDCからの提言を行った。ここからは、敷田氏の講演概要を振り返る。
新型コロナウイルスの感染が国内で拡大していた2020年7月に、IDC Japanでは、国内企業を対象にDX推進目的の実態調査を行った。その結果、建築/土木は他の産業分野と比べると、「ICT活用による従業員の生産性と採算性の最大化」「企業資産としてのデータ/情報をマネタイズする仕組み作り」「AI/機械学習活用による最適なアクションの特定と実行」など、全産業分野と同様に高い回答率となっている。
国内企業のDX推進状況では、「全社的に取り組み、継続的に変革が推進されている」と回答した企業の推移を、新型コロナウイルス発生前の2019年9月、1回目の緊急事態宣言から解除後1カ月強が経過した2020年7月、再び感染者が増加した2020年12月の3つの期間で分析。全産業では、2020年7月にはプロジェクトの凍結や投資マインドの低下を要因に割合が下がり、2020年12月には再び増加に転じる回復傾向がみられたが、建築/土木はコロナ禍の負の影響を色濃く受けた「流通」と同じく、2020年12月も低下が続いており、まだ十分な回復基調となっていない産業の1つという見方ができる。
新型コロナウイルスとその回復状況に関する調査については、オートデスクとともに、アジア太平洋地域(APIJ)の建設業283社を対象に2020年7月から10月にかけて実施した。調査対象国は、オーストラリアとニュージーランド、インド、シンガポール、日本。
調査では、4つの国で、DXの取り組みに対して組織や企業全体の戦略と結びついているのか、あるいは限定的な組織・部門、あるいは個人で行っているのかで5項目に分け、DXの成熟度や長期または短期のアプローチの違いでも分析した。日本は、「DXアプローチには、オペレーションおよび顧客/サービスエクスペリエンスにおける統合された継続的かつ全社的なDXイノベーションという、2021年度で終わらない長期的なコミットメントがある」「長期の投資計画があり、DXを利用して新しいビジネスモデルと製品/サービスエクスペリエンスの創出を通じて、市場と顧客を変革することを企業戦略としている」といった長期的かつ企業戦略としてDXを行っている企業が4割と、他の国よりも圧倒的に長期的アプローチでDXに取り組んでいる。
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