近年、国内では、道路橋の老朽化に伴い、傷んだ道路床版をプレキャストPC床版へ取り換える工事が全国各地で行われている。当該工事では、鋼桁とPC床版はスタッドジベルと呼ばれる鋼桁に設けられたズレ止めによって接合しており、ジベル孔開口部に充填する材料の品質は、スタッドジベルとPC床版の一体性を確保するために重要だ。そこで、戸田建設は、ジベル孔開口部に充填する材料としても役立つ繊維補強モルタルを開発した。
戸田建設は、ポリプロピレン繊維と円形状の鋼繊維(リングファイバー)を混合した独自の繊維補強材(ハイブリッドファイバー)を無収縮モルタルに添加することで、従来よりも引抜力と靭性を高めた繊維補強モルタルを開発したことを2021年6月17日に発表した。
ハイブリッドファイバーは、ポリプロピレン繊維と円形状の鋼繊維(リングファイバー)を混合したもので、コンクリートに添加すると、低コストでひび割れの発生を抑えられる。
これまで、戸田建設では、トンネル工事で使用される吹付コンクリートにハイブリッドファイバーを適用し、上記の利点に加え、施工時の安全性向上を確認している。そして、同社は、適用範囲の拡大に向け研究を続け、ハイブリッドファイバーを無収縮モルタルに添加することで、従来品よりも引抜力と靭性を高めた繊維補強モルタルを開発した。
今回の繊維補強モルタルは、ハイブリッドファイバーを無収縮モルタルに添加するもので、ポリプロピレン繊維のみを添加した繊維補強モルタルと比較して、引抜耐力とひび割れ発生後の荷重保持力が高く、さらに靭性がアップすることを引抜試験で確かめている。
また、道路橋の鋼桁と道路床版の接合部(スタットジベル部)に適用することで、従来品よりも、鋼桁と道路床版の密着性や一体性を向上し、道路橋の耐荷性能を高められる。
戸田建設では、道路橋における大規模更新工事の品質向上と工期短縮の実現を目指し、この繊維補強モルタルを道路橋の品質向上技術として展開するとともに、材料の特性を生かし、幅広い用途への適用拡大に向け、技術開発を継続している。
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